「萌はある日突然、空から降ってくる」秋津京子


(PDFバージョン:moehaaruhitotuzenn_akitukyouko
 ニコ動、pixiv、イープラス、USTREAM、ツイッター、そしてAmazonを始めとするネット通販……。
 みなさま、これらのサイトを活用してますか? 私は昨年の今頃、このうちの半分もろくろく知りませんでした。それが今やフル活用。
 事の起こりは某アニメ。友人から、ちょっと面白そうなアニメが始まると教えてもらったのが、昨年の春。
 会社に雇われたヒーローが会社のロゴを背負って悪と闘う世界。主人公は盛りをすぎて今や崖っぷちのおじさんヒーロー。そんな彼がバディを組まされたのが有能で生意気な新人で……。
 ああ『TIGER&BUNNY』(以下タイバニと表記)の事ね! と分かった人は話が早い。分からない人は、サンライズの公式HPか、ウィキペディアでもご参照ください。安易に2chなどには飛ばないように(ここ大事。男子禁制の異次元世界を知ることになるでしょう)。
 元々マーベル・コミックのヒーローもの映画が大好きな私。日本を舞台にしたヒーローものがあったらいいのに!と常々思っていたところに、この話。
 そんなこんなで、第一話をなにげに見たのでした。
 ちなみに私、二十年前は超がつくオタクでしたが、ここ十年はすっかり枯れはてて、今や一般人から見ればオタクだけど、オタクから見たらただの漫画好き、ぐらいのレベル。 アニメにはまったのもエヴァンゲリオンが最後?てな状況で時が止まっており、最近のオタク事情もまったく知らなければ、アニメを一話から視聴するなんて珍しいことでした。
 そう、はじめはあくまでもフツーのテンションで観ていたのです。
 ところが7話で主人公のオジサン、実は最愛の奥さんとは死別らしい、という悲しい背景が分かってから激はまり。はい、今風に言うと、「オジサン萌え~」というものですね。自分も今まで知らなかった自分の萌えポイントにびっくりです。
 ところでこのアニメ、東京では火曜日の夜11時にMXテレビで放送されていたのですが、実はその3日前の深夜にUSTREAMでネット配信していたのです。
 これがまず、最初のカルチャーショックでした。
 私が知らない間にアニメはネットで観るものになっていたんですね。
 衝撃だったのは自分の家のPC環境が悪いと画像が固まったり落ちたりすることです。しかもネット配信って素人には録画方法が解らない! 録画がビデオテープからDVD、そしてブルーレイに進化したこの時代に!
 当初はテレビで放映されたものを録画して翌日に観ていたのですが、だんだんそれではがまんできなくなり……。
 気がついたら毎週土曜日、深夜2時から息を詰めてPCの前に鎮座する生活がはじまったのでした。
 ところで、このネット配信、制作者にとって恐ろしいこと(たぶん)に、リアルタイムで視聴者数が出るのです。当初はたったの1500人だったそうです。それがあれよあれよと人気が出て、私が見始めたときには3万人。その後、回を追うごとに人数が増え、最終回には7万人を突破。ちなみにこのアニメ、制作者の意図は、昔アニメを観ていたおじさんへの応援歌になるような作品、だったそうですが、蓋を開けたら、おじさんではなく女子(おばさんを含む)が大喜び。そりゃあ、子持ちやもめオジサン(ただしイケメンに限る)ががんばる話は同性のおじさんより女性の方が好きかろう……って、これはまた別の話になるので置いといて。
 想像してみてください。全国7万人の女子が深夜、PCの前に鎮座する姿を! 壮観ですね。
 そしてネットでアニメを視聴した大多数の視聴者がそのままツイッターになだれこみ、番組の感想をチャット状態で語り合い、深夜のTLをタイバニ関連の用語で埋め尽くしたのでした。
 当時は「朝起きるとタイバニの話でTLが埋まって、あぁ、今日は日曜日なのね」と曜日確認していた人もいたとの事。
 このツイッターを使いこなすというのが、まさに今のオタク今事情。このツイッター、情報収集にも大活躍。
 凄かったのは、作品にほんの一瞬出てきた主人公の使った香水が、朝にはツイッター上でブランドが確定し、その後、Amazonで速攻売り切れた、を皮切りに数々の関連商品がネット上で売り切れたのでした。
 私自身、カード引き落としは怖いからとネット通販を敬遠していたのに、もうあちこっちのショップを登録しまくり。というか事前に登録していないと、数々の争奪戦に敗れるという恐ろしい状況に。ついでにあちこちのHPに押し寄せてはサーバーを落とし、「タイバニクラスタ、恐るべし」と、言われたとか言われないとか。
 そうそう、クラスタという言葉も今回初めて知りました。属性を現す言葉だそうですね。ところでオタクのサガとして、好きな作品があれば2次作品をつくりたくなる、もしくは読みたくなる、のは今も昔も変わらず。
 ここで第二のカルチャーショックだったのが、ニコ動とpixivの登場です。
 動画、音楽、漫画、小説、ありとあらゆる2次創作活動を、大勢の素人が(中にはプロも混じってますが)愛ゆえに作品を無料でニコ動やpixivにUP。なにが凄いって、SF大会や一部の大学のサークルの間でしか流通していなかったMADムービーや、即売会や専門ショップに足を運ばなければ手に入らなかった同人漫画が、手軽にネット上で観られるようになったこと。今やファンの手による3G作成も当たり前。
 まさに一億総クリエーター状態の日本。
 プロとして、お金を払って買ってもらうということが、どんなに大変なことかをあらためて思い知らされた次第。
 そうこうして迎えたタイバニ最終回。なんとリアルタイムの深夜に映画館での上演会が決定したのです。ついでに全国の映画館でライブ中継も決定。これもまさに今風。
 4万人のファンが深夜の映画館に集結。メイン会場となった新宿バルトは150倍の倍率だったという噂も。最終回、USTREAMで7万人越えの視聴数があったことを考えると、実に11万人以上のファンが深夜2時に最終回を同時に観たという計算に。
 このチケット取りにも実に大変でした。
 昔はプラチナチケットを手にするためには電話をかけるか、チケット売り場に並ぶ……が、常識でしたが、今はネットで買うかコンビニで買うか、なのですね。
 というわけでイープラスの登場です。これまた十年間、隠居していた身にとって、昔の2大勢力だったチケットぴあやチケットセゾンはどうしちゃったの!? イープラスってなに!? てな状態で。
 電話で申し込んでいた時代は、NTTに勝手に回線を切られても、歯ぎしりしながらひたすら番号をリダイヤルするのが必勝法でしたが、今時のチケット取りはサーバー落ちだの回線切れだので手も足も出ない状態。これ、必勝法知ってる人、是非とも教えてください。
 ちなみに私、チケット争奪戦は負けましたが、友人のおかげで無事行けました。持つべきものは昔も今も友ですね!
 まぁ、その後もフィギュアが発売されるとあって、フィギュアクラスタに混じって、早朝からバンダイのイベントに並んだりヨドバシに並んだり……。オモチャ買うのにも過酷な争奪戦があるだなんて初めて知りました。
 これはこれで深い話があるのですが、長くなるので割愛。
 そんなこんなで、昨年はたった一年で空白の十年を一気に駆け抜けたのでした。
 そしてこのタイバニ、今年映画化が決定!
 いやはや、おちおち隠居もしてられないですね。
 これからもまだまだ踊らされるのでしょうか? あまり隠居生活が長いと、現状についていくのが大変なので、もう少し世間の動向に目を向けてないとな、と反省した次第。
 と今回は主にハード面(どこが!?)を勝手に語らせていただいたので、次回はタイバニのソフト面について語らせていただきたいと思います。
 というのは冗談で。長々、お目汚しごめんなさい。



秋津京子プロフィール


秋津京子既刊
『…大好き。』