「日本壊滅」―宇宙細胞フルバージョン・オーバー1000Pより抜粋―黒葉雅人

(PDFバージョン:nihonnkaimetu_kurobamasato
※筆者より

 以下は、第9回日本SF新人賞を受賞させていただいた筆者デビュー作、
「宇宙細胞」――のフルバージョンからの抜粋です。
「宇宙細胞」は
 応募時550枚、改稿時1000枚超――、そして出版時570枚でした。

(改稿からの大削減は、全てわたし黒葉雅人のわがままによるもの。
 その節、担当の方には多大なご迷惑をおかけしました。
 この場、公の場を借りてお詫びします。
 まことに申し訳ありませんでした)

 削減した理由は【この話に、人間側の都合や思惑に行動は要らない】でした。
 ですが。
【ヒトが書き、ヒトが読むものは、ヒトが描かれたもの】ではないかという、当たり前といえば当たり前な思いに考えも、少なからず持っていました。
 加えて以下作は、
(書いた当時も含めた)近年の、なんとなく危うい気配がしないでもない日本および世界は【起こってしまった有事】の際に、どう考え、どう動くのか? という筆者なりのシミュレーションでもあります。

 いささか気恥かしいのですが、(ヒトと日本と世界)を筆者が愚考した一部を、今回、公にさせていただきます。
 なお数年前作の、しかも削除部分の御蔵出し――この点につきましては、読み手のみなさまの寛大な心でのご容赦、それを願うばかりです。

黒葉雅人


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「日本壊滅」(宇宙細胞フルバージョン・オーバー1000Pより抜粋」

 突然、東京で、異形が、人間たちを襲い始めた。
 警察には(機動隊を呼べ)、市役所には(避難場所を教えろ)、保健所には(伝染病なのか?)という電話が殺到した。
 スクープ狙いのマスコミはヘリを飛ばし、街の惨状を空撮する。赤灯を回転させている緊急車両のパトカーと救急車が、一般の乗用車、タクシー、トラックに行く手を阻まれ、立ち往生していた。

 現場末端から地域下部組織、上部組織へと順繰りに、しかし官僚的に、役所的に、段階的に、情報が日本行政の頂上にまで上がってきたのは、騒動勃発からだいぶ過ぎてのことだった。首相は電話の受話器を握り締め、怒鳴る。
「官房長官、出ろ、今すぐ出ろっ」

 報道陣は、日本民間放送連盟放送基準第六章三十六条【事実の報道であっても、陰惨な場面の細かい表現を避けなければならない】を意識し、あまりにも悲惨な空撮映像の取り扱いに迷う。戸惑う。しかし止まる気配のないまま広がり続ける惨状を見て、決断した。異常事態の報道に走った。ただし、その考えは当初の特ダネ根性から、あっという間に、まっとうなものに切り替わっていた。
「情報をみんなに教えるんだ。被害の少ない、安全な場所を知らせるんだ」

 会見場で政治家はぶら下がり記者たちに吊るし上げられる。
「国会は、事態を把握していないのか?」議員秘書に国会記者会が訊く。
「外務大臣補佐官、外国のBC兵器の可能性は?」霞(かすみ)クラブが問う。
「事務次官補佐官、厚生労働省として、病人の保護と隔離体制の用意は整っているのか」厚生日比谷クラブの記者たちが憤る。
「運輸大臣の……代理に、お訊きします。輸入品に病原体が混入していた可能性については、どう考えている?」国土交通省交通運輸記者会が詰問する。
 しかし。
 質問にまともに答えられない、ただいま調査中、善処しているところでございます、と繰り返すだけ、良く言えば老獪(ろうかい)、悪く言えば、言質(げんち)を取られないために、無色透明な言葉でお茶を濁している男たちに、ついに政治記者たちは椅子から立ち上がり、みんなで押し寄せ、取り囲み、詰め寄る。怒鳴り上げる。
「あんたら、なにもする気がないのか? それとも、できない、無能なのか?」
 防衛大臣――次官も、額に汗を浮かべ、答弁していた。
「今、訊かれました自衛隊出動の件ですが、現事態が第三国の敵対行為、仮に攻撃とした場合では、自衛隊法七十七条の自衛隊出動待機命令、そののち、調査部の調査結果による自衛隊法八十二条での自衛隊法発動三要件を満たしてから、ということになります。自然発生した疫病による災害であるならば、八十三条での災害派遣の対象となりますが、」
 堪忍袋の緒が切れた防衛記者会が罵倒する。
「国民が攻撃、少なくとも非常に危険な状態にさらされているんですよ。これはもう、緊急事態でしょう? 首相の、最高指揮権者からのなんらかの発令はまだ、ないんですか。だいたい首相をはじめ、省のトップは、大臣連中は、みんなどこに雲隠れしているんだっ」

 首相官邸、四階閣議室に、脂汗にまみれた額をした男たちが集まっている。
 混乱が始まってから数時間後、ようやく首相を交えた閣僚会議が始まっていた。
 だが。
「呼び出したうちの半分もいないじゃないかっ。電話にも出ない。いったい、どういうことなんだ? 一番大事な肝心な、防衛大臣は、どうしたっ」
「……首相。やられたんだよ。そうとしか、考えられない」

 自衛隊出動命令が出た。しかしその自衛隊内部にもすでに異形にやられた者が多数いたので、治安制圧に満足な人数を出せなかった。
 災害対策本部が始動開始するも、有効な対策を打ち出せない。
 混乱する中、自衛隊との連携が上手く機能しないのに苛立った警視庁は独自にヘリを飛ばした。現場で動く刑事と警官は目撃情報を収集、避難民の誘導と同時に、「いったい、なにが起こったのか?」と事情聴取。さらには大手電化製品店などに乱入した命知らずの火事場泥棒、あちこちで頻発している自暴自棄(やけくそ)になった男たちによる強姦の阻止にも追われる。
 報道陣のヘリも空を飛び、時間を追うごとに酷くなる現状を伝える。朝・昼・午後・夕方・夜・特番・深夜特番と、感染者増、混乱増とともに、テレビ放送も過熱した。もちろん、東京以外の報道陣がだ。
 全国の地方局アナウンサーが冒頭に言う単語はみなおなじだった。
《東京病は――》

 収集がつかない。
 明確な敵国の存在も判明しない。
 しかし事態を治めなければならない。
 ところが敵国の日本国土への侵略行為あってこその有事法制は発布できない。
 法体制に縛られた国は――身動きできない。
だが緊急事態だ。
 東京外に置かれた臨時国会で、国家緊急権が叫ばれる。
 憲法の枠組みを超えた機能と権限が要求される。
 想定外の異常事態に、少数の護憲論者の声が封じられた。
 改憲論者が多勢を占める。優勢となった。
 後者を、被害に遭っている、助けを求める世論が支持する。
 後押しする。
 日本社会の空気ががらりと変わった。
 歴史の中に消えた法が蘇ることとなった。
 首相発の(戒厳令)が――ようやく、ようやく布(し)かれた。

 東京地区担当の人数が半減している自衛隊でも、いざ命令が下されれば、その力を発揮する。警察が避難民の誘導をしているのに対し、単なる(出動)ではなく、戒厳令下の自覚ある自衛隊の動きは少し、いやかなり質の違うものとなっていた。
 復活した戒厳令第一条は次のようになっている。
『戒厳令ハ戦時若クハ事変に際シテ兵備ヲ以テ全国若クハ一地方ヲ警戒スルノ法トス』
 事実上の戦時下宣言だ。訓練ではない。自衛隊も創設本来の目的に沿って行動していた。
 ――自衛だ。
 東京を丸く囲む国道十六号を基本防御線に定め、自衛隊車両による防砦(ぼうさい)、バリケードを築いた。
 車で脱出してきた東京都民が道を塞ぐ防砦を見てブレーキを踏む。白いセダンを先頭にトラック、タクシー、軽自動車などの後続が次々に停まる。荒々しく白、黒、赤のドアを開け放して出てくるのは命からがら逃げ出してきた連中ばかりだ。その顔はどれもこれも殺気立っていた。眉間にできた凸凹、充血し見開いた眼、固く閉じられた口の横に走る深い縦皺。そんな面々のうち一人が、行く手を遮る、道を横断する形で横に置かれた大型バスの上に立つ男に向かって拳を振り上げ、怒鳴り上げる。
「おい、バスをどけろ。ここを開けろっ」
 バスの屋根上で両足を広げて立っているのは、枯草色のスキーウェアに似た、化学防護衣四形を着ている自衛隊員だ。防護マスク四形で顔を覆っているので、表情は外の者にはわからない。眼前面にある二つの大きな丸ガラス、口前に突き出ている円筒形マスク、その三つの丸だけでできた顔の上にはヘルメットも被っている。完全防備だ。一番下の円筒形部分に、手に持っていた拡声器、スピーカーをあてる。出てきた声は大声で、太くて、割れて、角張っていた。
《これより先は、進入禁止となっている。通過することはできない》
「なに言ってる? ふざけるな。戻れなんて言うんじゃないだろうな?」
《繰り返す。ここから先へ通ることは許さない》
「許さないだと? おまえら自衛隊なら、闘えよ。あいつら倒さないで、ここでなにやってるんだよっ」
 逃亡者の一人が、拡声器男が立つバスに向かって歩き出し、近寄った。
 ヘルメットの中にある無線装置、その骨伝導システムによって内耳に直接、上官の指令を聞き取ったバス内の部下の一人が質問する。
《本当に、撃つんですか?》《二度も言わすな》《しかし》《東京病を、外に出すわけにはいかない》《感染しているようには見えません》《おまえ、医者か? 生物学者か? どうしてわかる。――いいか。ここをやつらに突破されたら、被害はさらに広がるんだ》《ですが》《馬鹿者っ。ためらっているあいだに、神奈川までこの騒ぎが進行するぞ。――よし。おれが手本を見せてやる》
 バスの上に立つ自衛隊員は発砲した。
 自衛隊の(自衛)は、国を護(まも)る、だ。
 東京包囲網が完成した。

 高層ビルとビルのあいだに、前後に一つずつある回転翼を回して低空飛行している迷彩模様の大型輸送ヘリの機体があった。
《いけ、いけ、いけ》
 背中を押す上官の叱咤号令を受けて、隊員たちが次から次へと、ロープ降下していく。彼らもまた、化学防護衣四形を着、防護マスク四型を装着していた。十人降ろすと、別の場所に残り四十五人を降ろすため、大型ヘリは去っていく。
《分散するな。四―四―二隊形を組んで進め》
 指揮官の指示のもとに、前二人、後ろ四人は並列、真ん中の四だけ菱型、ボックス型にした攻撃的にも守備的にも変容可能な編成を組んだ隊は四方を警戒しながら、各々が持つ機関銃の銃口を、味方、仲間でできた陣形の外に向けていた。まわり――歩道、ガードレール向こうの幅広い道路、その先の駅ビル前広場――には、異形が立ち溢れている。車道を走る車はない、みな停まっている。そのあいだを、ゆら、ゆら、と人肌を持ったしかし異形が無数に立ち歩いていた。
 ヘリの風に倒されないようその場にじっとしていた異形たちが、隊員の会話を聞きつけ、身体の向きを変え始めている。車道から寄ってこようとしてその低身長ゆえにガードレールに胸から上をぶつけ、進行を阻まれている連中を除けば、駅ビルからの横断歩道、それとは反対側の歩道、そして真横のビルの一階から、ぞろぞろと、のろのろと、よたよたと出てきて、近づいてくる。異形でできた輪はゆっくりと、しかし確実に狭くなっていく。
《撃て》指揮官が断を下す。
 銃口が火を噴いた。
 ぼご。ぼぐ。ぼぶ。異形の身体が弾丸を受けて、揺れる。
 しかし倒れない。
《効かないぞ》《こいつら、不死身か?》
 装甲弾丸は異形の身体を貫通していた。九ミリ弾より口径の大きい弾丸は、異形たちの顔、身体に、星型の射入口、射入口より範囲の広い射出口を作ってはいる。だが空いた穴はすぐに修復されていた。血肉でできた五亡星はゆるゆると縮まり、小さくなる。そして糸が使われていない縫合でもされたかのように、癒着し、赤い筋の盛り上がりを傷の名残に治癒していく。
《火だ。火を使え》。指揮官の要請に、隊員の輪の中にいた何人かが前に出る。火銃口を突き出した。火炎放射器が炎を吐いた。
 しかししばらくして、数体の黒焦げ死体を前にした隊員たちの作る輪が小さく狭まる。
《駄目です。敵が多すぎます。燃料がもちません》
 弾丸が効かず、火が残り少ない。退治できない。指揮官は次善の策を発した。
《撤退だ。道を作って、そこから逃げるぞ》
 火と弾が、群がる、無数に群がる異形に向かっていった。
 それでも輪は、数の論理、多数決優勢で、縮まっていく。

 ニューヨーク市マンハッタンのイーストリバー沿いに、国際連合本部ビルはある。そこで、安全保障理事会を兼ねた総会が行われていた。緊急国連会議だ。
 議題は(東京病対策)。
 壇上に立つ、ある有名な日本人男性の言葉が、各国語に通訳され、イヤホンした耳から各国代表の脳味噌に伝達される。切々と物静かに話された内容は次のようなことだ。
 ――本来なら、わたしの身がいかになろうとも、国土を離れるべきではないと思う。しかし、わたしの立場、役目は、今ここにおられる皆様のお力をお借りすること。これ以上東京が崩壊し、なによりも日本国民が正体不明の病(やまい)により今以上倒れるのを見るのは忍びない――。
 すり鉢状で、弧、扇形の段々となっている会場内にいる面々全員が、座っている椅子から立ち上がった。国連旗の下に立つ一日本人が壇上から降り、議場を退くのに合わせて、日本式の挨拶、お辞儀をしていく。各国代表の上下する頭が静かな波の動きと似たものになる。

 本格的な会議が開始された。
 まずはアメリカが主張した。先ほどお辞儀していた中の一人、黒人女性が話し出す。ドライな声でクールなことをだ。
《事実上、一夜にして崩壊した日本首都東京の状態を、人工衛星で捉え、観察した。その結果から、その災害地域のど真ん中にある、やはり壊滅した日本政府には処理能力およびその機能はない、と結論づけられる》
 静かな、しかし確かなどよめきが、会場内を支配する。
《よって我が国は事態収拾策として、<生物災害、バイオハザード拡大を防ぐための大局的見地>から鑑(かんが)みて、大量破壊兵器の使用が妥当と考える》
 イヤホンから流れてくる自国語を聴いた面々の顔が瞬時に引き締まる。会場内は静かなどよめきから、大きなどよめきに変わる。
大義名分を作り上げ主張するアメリカは、日本に対して通算三度目となる、しかもおそらく過去最大級の大量殺戮兵器を投下しようというのだ。
《爆発後に、遥か上空にまで昇り広がるキノコ雲に含まれる核残留物質が我が国に降りかかる危険性が高い》
 日本と小さな海を挟んで隣接する朝鮮半島の二国、半島とつながる大陸国の中国とロシアが即時に猛反発した。
《もし投下されたならば、即刻自国への攻撃とみなして同程度の攻撃力でもって反撃する》と、連名で公言した。それは中国、ロシアのみならず、朝鮮半島二国の核爆弾所持の表明でもあった。場内がざわめく。そして同日には、中国との関係から国連に加盟していない、できない離島国台湾までもが、同様の声明を発表した。しかしそのことに言及する、詰問する国は、なかった。今国連が問題にしているのはその課題ではないし、そもそも裏情報では公然の事実だ。なによりも誰しもが想定外の伝染病である(東京病)が自国に波及しないための問題解決が最優先だった。
 それに、(全世界を平和にする)という目的思想はどうあれ、まわりから見れば常日頃、アメリカ優位の世界統一化、パックス・アメリカーナを目指しているとしか思えない世界最大大国への反感からくる逆襲がこの時とばかり、始まってしまった。
 昔、アメリカに枯れ葉剤を巻かれその戦後保証を貰えていない経験ある国を包含する東南アジア。近年アメリカに石油資源の分配とイデオロギー、主義主張の違いを理由に目の敵(かたき)にされている中東アジア。アメリカに持ち込まれる麻薬の温床と叩かれ続けてきた南アメリカ勢。中東アジアとおなじく石油やさまざまな地下資源及びダイアモンド資源をアメリカ系国際多業種企業体コングロマリットに不当に搾取されていると感じていたアフリカ諸国もアメリカ非難に加わり、最後にはアメリカとつかず離れずの政策外交をしていた欧州連合EUと豪州オーストラリアも世界の動向に追随した。
 世界の警察を自認する、世界は番長と認識しているアメリカと崩壊状態の日本を除いた、全世界各国のアメリカ包囲網が完成した。
 国連会議の模様が世界に放送されると、アメリカ国民は逆上した。
「正義はおれたちにあるっ」
 アメリカ国内にある各国大使館に火事騒ぎ、投石、抗議、デモが相次いだ。
 反対に、各国のアメリカ大使館もおなじ目に合う。
「イラクの時みたいに独断専行するなっ」
 次の日。
 各国政府、それに各国の頂上に立つ男それに女たちは、冷静だった。
 反ア《日本は貴国の同盟国(子分)なのだから、貴国が核兵器抜きで対処せよ》
 アメ《確かに日本は同盟国(半植民地)である。我が国が対処する。ただし核抜きならば、時間を頂きたい》
 反ア《(餌か?)時間をかければ、日本の被害はさらに広まる。引いては近隣他国への汚染も考えられる。核以外の方法を考え、早急にすべきだ》
 アメ《核抜きの我が国軍隊、そして日本にまだ存続している自衛隊だけでは、一千万超であった東京復興は事実上厳しい。一つ、提案がある(餌をやろう)。東京の遥か西方、関西に緊急設置された仮日本政府から世界各国に伝えたいことがあるそうだ》
 一人の日本人男性が国連旗の下に立つ。マイクに向かって喋る。
《我が国は、東京救済の代償に、各国に提供している日本からの政府開発援助金ODAを全て帳消しにする》
 ある国の一人が隣の同国人に囁く。
「日本政府は、国民じゃなくて、土地の救済、取戻しを求めている」
「そうだ。関東大震災、東京大空襲、そして今度で三回目となる大掃除、首都の一大再整備こそが目的だ……しかも自衛隊、自身の手を汚さずに」
「いいさ。こっちは別にかまわない。それが日本政治を代表するやつの言うことなら」
 三分の二以上で可決される決議は、満票だった。
世界は日本の申し出を承諾した。
 元首相、現日本臨時政府(仮)代表である、パーマがかかった毛束の少ない白髪頭が老いた獅子風、ライオン風に見える日本人が壇上、会議場から退くとき、世界の代表は誰一人立ち上がらなかった。

 東京病は猛威をふるう。
 その勢いは止まらない。
 国連部隊が投入されても止められない。
 全国に広がる。
 津々浦々に広まる。
 呼び名が、東京病から日本病へと変わっていく――。

 国連会議――事実上の欠席裁判が行われた。
(日本を封鎖する)ことが決議された。
 そして実行された。
 陸・海・空――全てが完全封鎖され――日本からの出口は無くなった――。


「日本壊滅」(宇宙細胞フルバージョン・オーバー1000Pより抜粋」(了)


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黒葉雅人プロフィール


黒葉雅人既刊
『宇宙細胞』