「怖くないとは言ってない」―第三回 これは本当にあった話なんだけど―牧野修(画・YOUCHAN)

(PDFバージョン:korehahonntouni_makinoosamu
 夜中自転車で走っていたら職質にあった。きちんとライトもつけているし、もちろん登録済みの自転車だ。問題は何もない。だから、ご苦労様です、たいへんですよねえ、とニコニコして受け答えしていたらどんどん警官の数が増えていった。なんだかひっきりなしに無線機で喋っている人がいる。あっという間に若い警官から年嵩の警官まで十人あまり、私の回りを囲むようにして集まってきた。カバンを見せろとか言われるかなとドキドキして待っていたら、自転車の照合が終わると同時に、わらわらとみんな解散していった。というような経験から、職質の時は警官に向かってにこやかに話し掛けてはならないという教訓を得た牧野です。
 実際それからは職質されると不機嫌そうに応対することにしているが、あっという間に話が終わって解放される。しかし何よりも問題なのは、なんで私はこんなに職質されるのかということである。いや、答えは聞きたくない。
 それはそれとして。
 さて、みなさん、おわかりいただけただろうか。これまで毎回読んでくださっている方ならわかるかもしれない。本エッセイの冒頭に書かれていることは、すべて私が本当に経験した話なのだ。ほとんどどうでも良いような話ばかりではあるのだが、実話であることは間違いない。
 というわけで今回のテーマは「本当にあった怖い話」なのである。

 今ある実話怪談本の先駆的存在である『新耳袋』が扶桑社から世に出たのは1990年。それが世間に大きく認知されたのは1998年にメディアファクトリーから再版がスタートしてからだ。
 そして『新耳袋』と双璧を成す実話怪談本のシリーズ『「超」怖い話』が始まったのが1991年。
 出版だけではない。
 前述した『新耳袋』は『怪談新耳袋』としてテレビドラマ化された。一話五分という制約で作られるホラードラマは2003年2月から、なんと第五シーズンまで作られ、さらには映画化もされている。
 実話怪談の発展系としては心霊写真の動画版を一般投稿によって集めたとするオリジナルビデオシリーズ『ほんとにあった!呪いのビデオ』が開始されるのが1999年。テレビで『ほんとにあった怖い話』が放映されるのが1998年。レギュラー化されるのは2004年。
 二十世紀末から今世紀にかけて、「本当にあった」とされる無数の怖い物語が生まれたことになる。
 最近ではこの当時に制作された「本当にあった怪奇映像」が細切れにされてネットにアップされ、元ネタが知らされぬままに本当に「本当にあった話」となって流布され、さらにはそれをテレビが「本当にあった怖い映像」として取り上げ心霊特集の番組で紹介するというような、「友達の兄貴のツレから聞いた話なんだけど」で始まる怪談実話が仕上がっていく過程をみるような現象まで起こっている。いやあ、みんな本当にあった怖い話って好きなんだね。
 ちなみに余談ではあるが、こういった実話怪談がどうして実話でなければならないかというような話を、先日エッセイとして書かせてもらった。それは六月二十五日発売の『怪談実話系ベスト・セレクション』に掲載されるので、興味のあるお方はご購入の上読んでいただければ(私が)幸いである。えっ、それがあったから今回このテーマを選んだんだろうって? ステマ? な、なんですかそれ。馬鹿なこと言っちゃあいけませんよああたわはははは。
 
 こういった心霊実話の先駆としては、TV番組『お昼のワイドショー』での怪奇特集『あなたの知らない世界(1968年)』がある。視聴者から寄せられた実話を再現フィルムで紹介し、つい先日お亡くなりになった新倉イワオ氏がコメンテーターとしてそれを解説する番組だ。
 この再現フィルムが圧倒的に怖ろしかった。無名の俳優たちと安上がりな映像で描かれる霊現象は、ものすごく生々しく、熱にうなされながら見る悪夢のようで、当時の子供たちの心に消えない傷を残した。私もその時傷物となった一人である。余談ではあるが、小学生向けに書いた拙著『都市伝説探偵セリ1、2』に、やたらオカルトに詳しい小学五年生新倉岩魚を登場させている。すまん、本当に余談だった。

 フィクションの映像がその完成度で語られるのに対して、実話の持つ力はその生々しい肌触りにある。それは表現としては稚拙であったり、毒々しかったり、洗練とはほど遠いところにあるが故に心に残る。
 このある種のいかがわしさが実話の持つ力だ。
 怪談もそうだが、犯罪実話というものもその系列に入るだろう。怪談が超常現象ホラーであるなら、犯罪実話はサイコホラーだ。どちらも本当にあった「怖い話」であることに変わりはない。
 それはおぞましいこと悲惨なことですら楽しんでしまえる、人の貪欲な物語欲のようなものを示すと同時に、実話だもの、というのが一種の言い訳として機能しているのも共通している。
 映画というものは、そういったあくどい好奇心を満たす見世物として機能している面も多々ある。いわゆるエクスプロイテーション映画がそれだ。エクスプロイテーション映画というのは客から金を搾取(エクスプロイテーション)するために何でもしちゃう映画という意味で、安い制作費で猥褻だの恐怖だの下品悪趣味なんでも利用して観客を集めようとする様々な映画がそう呼ばれる。
 ホラー映画もたいていが見世物として提供されるわけで、低予算ホラーというものがおおよそこのエクスプロイテーション映画に分類されることとなる。

 見世物が実話というものの力を利用するのはもっともなことで、映画も例外ではない。というわけで、偽ドキュメントというものが誕生する。社会派という言い訳で残虐で差別的で猥褻なあれこれを「実話なんだから仕方ない」みんな見せちゃいます、というやり方はもっと洗練した形でテレビのドキュメンタリー番組がやって見せているが、昔はもっとどぎつく「てめぇらこれが好きなんだろうが!」と叩きつけるようにドキュメンタリーっぽい映画が作られた。
 最も有名なものが『世界残酷物語Mondo cane (1961年)』に始まるグァルティエロ・ヤコペッティ監督が制作した「ドキュメンタリー映画」だろう。世界の残酷な事象をオムニバス形式で紹介するこれらの映画は、犬を食う中国人とビキニ諸島で放射能の影響で狂った(とされる)生態系を同列に紹介し、金で雇った僧侶に焼身自殺をさせたり、殺人犯の黒人を射殺する白人の傭兵を撮影したりと、ヤラセもなんのその、裁判沙汰まで起こったあれこれをとことん見せてしまう。それがヤコペッティの「ドキュメンタリー」だ。
 ヤコペッティはそれでもまだはっきりとした文明批評というテーマを持っていたが、彼の成功を受けて現れた二番煎じ三番煎じにはライオンが人食っちゃいました、という場面が売り物の『グレートハンティング』とか人食っちゃった大統領『食人大統領アミン』とか、後でまた紹介しますけどとにかく人食っちゃった『食人族』とか、タイトルだけでお腹いっぱいになる「ドキュメンタリー」映画が山ほど存在する。
 日本では1976年から『川口浩探検隊シリーズ』というものが制作されている。これは川口浩が隊長となって世界の秘境を探検するというテレビ番組のシリーズで「驚異の人食いワニ・ブラックポロサスを追え!」とか「恐怖!双頭の巨大怪蛇ゴーグ!南部タイ秘境に蛇島カウングの魔人は実在した!!」というようなタイトルで、中学生男子の心をがっちり捕らえ、テレビの前に陣取って最後の最後まで見てがっくりと肩を落とす中学生男子を続出させたヒットシリーズだ。
 1985年まで続いたこの番組は、川口浩の死後、2002年に藤岡弘隊長による探検隊シリーズとなって復活した。



 なんだか今回はどんどんホラーと離れてしまったので、元に戻すこととしよう。

 こういった偽ドキュメントは、当時本物のドキュメントとして発表され、実際多くの人がこれをドキュメントとして信用していた。
 そこのところを「これはドキュメンタリーの手法を使って録った創作ですよ」と言っちゃう映画も存在する。最近ではそういった作品をモキュメントと呼んだりもするが、これもまた昔から存在する。
 さっき紹介された『食人族』もどちらかといえばそっちの仲間だ(まあ、当時は「本当にあったかも」みたいな紹介をされてましたけどね)。画像検索するとなんじゃこりゃというような映像がどっと出てくるので気の弱い人には勧めないが、アマゾンの密林に向かった探検隊の残したフィルムを回収して写してみたら、みんな食われていた、という身も蓋もない話である。
 この「消息を絶った探検隊の残したフィルム」というリアルさの演出は、後に映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』となって手法としては完成する。
 ただこういった映画はたいていPOV(Point of View Shot)といわれる、登場人物の誰かが持っているカメラで撮影したとされるショットで描かれることが多く、やたら手ぶれする画面に酔っちゃうのが欠点だ。酔い止めを飲んでから挑んで欲しい。
 その手ぶれを解消したのが、固定カメラで定点撮影していました、という監視カメラ風カメラワークだ。前述した「本当にあった呪いのビデオ」でも、二十四時間撮影されている監視カメラに偶然写った心霊画像というものがよく出てくる。
 そしてそれだけで映画を作っちゃったのが『パラノーマル・アクティビティ(2007年)』だ。超常現象が起こる家で、その謎を探ろうと監視カメラを設置した。そこに写っていたのは驚愕の事実だった! という映画なのだけれど、本当に地味な監視カメラ映像だけで延々ラストまでもたせる。そこまでたどり着けるかどうかは、家にまつわる超常現象をリアルなものとして感じているか否かという部分に委ねられるのではないだろうか。
 これは大成功して『パラノーマル・アクティビティ2』、日本で制作された『パラノーマル・アクティビティ第二章』、そして2011年末に公開された『パラノーマル・アクティビティ3』までが制作されている。
 続篇である『パラノーマル・アクティビティ2』は完全に前作の後日談として作られ、登場人物をはじめ、いろいろ前作とリンクしているが、謎とその解明を映像にちりばめられたヒントをもとに観客が推理出来るような仕掛けになっており、オカルトホラーとしては(あるいは伝奇ミステリーとしては)こちらの方がより出来が良いと私は思う。ただし超常現象否定派には、どちらもあまり楽しめない可能性は高い。
 そんな方にはもっと映画的というか物語性を期待できる『グレイヴ・エンカウンターズ』でモキュメントをお試ししてはいかがだろう。これはグレイヴ・エンカウンターズという超常現象の謎を探るテレビ番組のクルー(誰も超常現象なんか信じてない)が、噂の幽霊屋敷をテレビカメラを持って調査していてとんでもないことになっちゃう映画だ。本当にとんでもないことが起こるわけで、実話らしさとは完全に逸脱しており、実話っぽさを求める人には評判が悪いかもしれない。
 だいたい実話派とそんなこと本当にあるわけないだろう派の間には大きな溝があるのだ。実話派の多くが虚構には興味がなく(なんで嘘の話を聞かなきゃならないんですか)、心霊なんてあり得ない派でなおかつ怖い話好きの人間は実話には興味がない(だって実話のわけないじゃん)。私のようにホラー好きで実話も虚構もどちらも好きな人間は意外と少ないのだ。
 私と同世代のホラー好きにモキュメントの面白さを教えてくれたのが『邪願霊(1988年)』だ。石井てるよし監督のこの映画は脚本をJホラーの礎を築いた小中千昭が担当している。ビデオ・オリジナルであることの特性を最大限生かし、あるアイドルを追いかけたドキュメント番組がどうしてお蔵入りになったのかをモキュメントとして見せるオカルトホラーだ。オリジナル・ビデオは当時非常に高価なもので、普通はレンタルショップから借りてきて見る。で、レンタルしてきたこのビデオテープをいつものようにデッキに突っ込むと、タイトルもなにも出る前にいきなりざーっと砂嵐の画面が映る。ここから、すでに鳥肌ものの仕掛けが仕掛けられているのだ。今見直してみると、アイデアや表現で感心する発見はたくさんあるが、さすがに最初に見たときの怖ろしさは薄い。

 オカルト系には心霊以外にUFOに関するモキュメントもいろいろと存在する。そもそも『未知との遭遇』なんかもほとんどモキュメントで、UFOって現象としてはオカルトホラーなんだよね。
 というわけで『THE 4TH KIND フォース・カインド(2009)』である。
 まず映画が始まるなり「この映画は2000年に実際に起こった事件を元にして、現実に残された記録フィルムとその再現映像によって構成されている」といきなり現れたミラ・ジョボビッチがミラ・ジョボビッチとして説明をする。
 そしてその説明どおり、記録映画風映像と再現フィルムのドラマ映像が交互に、そして同時に映しだされる。
 主役となるアビゲイル・タイラー博士だが、実際に残されていた記録映像部分では貧相で華のないおばさんが演じており、それを再現フィルムで演じるのが冒頭で出てきたミラ・ジョボビッチである。すごい落差だ。これはつまり、橋田壽賀子の自伝『妻が夫をおくるとき』をドラマ化したときに岸本加世子が橋田壽賀子を演じたのだが、これを実際の記録画像として同時に泉ピン子が演じるというような構造と同じであると解釈すればわかりやすい。えっ、余計にわかりにくい? 
 いや、本当にこの映画の構成は非常にわかりにくい。内容は分かりやすいが、この二部構成の制作意図が分かりにくいのだ。
 実際の記録フィルム(とされる偽ドキュメント部分)を、それとまったく同じ画面をミラによって再現フィルムで描いてみせるだけでなく、それを同時に二分割画面で見せちゃったりする。これってどういう意味なんだろう。
 マイケル・ジャクソンの「今夜はビート・イット」のPVの横にアル・ヤンコビックの「今夜もイート・イット」を並べるみたいなこと? ご本人登場、みたいな。

 宇宙開発とモキュメントといえば、元祖はラジオドラマ『宇宙戦争(1938年)』となるだろうか。オーソン・ウエルズが作ったこのラジオドラマはH・G・ウエルズ原作のSFをもとに作ったドラマなのだが、あまりにもリアルな演出に聴取者がパニックに陥って大事件となったことで知られている。原作は何度も映画化されているので、ご覧になった方も多いかも知れない。ついでにこのラジオドラマによって引き起こされた事件そのものもTVムービー化されている。
 さて、この系列で『第三の選択』の話をしないわけにはいかない。これは1977年にイギリスのアングリア・テレビが製作したモキュメント番組だ。科学者たちの失踪事件を追っていた番組クルーが、政府の行っている恐ろしい宇宙開発にまつわる陰謀へと行き着いてしまう過程をきちんとドキュメントとして描いている。この手の手法に慣れていなかった当時の私は本当にどきどきした。今回調べてみて、日本では矢追純一が1982年に木曜スペシャルで「事実」のスクープとして放送したことがわかった。私は何となく深夜テレビを見ていて偶然見てしまったように記憶していたのだが、そんな怖ろしい事実はなかったようだ。
 宇宙開発と陰謀と言えばアポロ計画の話になるだろうか。アポロ計画捏造説は未だに根強く残っており、人間は月など行っていない、あるいは月で発見された怖ろしい事実をNASAは未だに隠蔽していると主張している人は、下火になったとはいえたくさんいるようだ。そんな人のために作られたのが『アポロ18号』だ。アポロ計画は17号で終わっているのだが、何故アポロ計画はそこで終わったのか。それは18号で起こったある衝撃的な事件が原因なのである! という陰謀好きの心をくすぐるモキュメント作品だ。残されたとされる記録映像のリアルさは尋常ではなく、映像技術の進歩に驚く。

 犯罪実話系のモキュメントも多く作られているが、傑作を一つ挙げろというのなら1992年にベルギーで制作された『ありふれた事件』になるだろう。殺人、強盗、暴力を日常とする男ベンを主人公としてドキュメンタリーを撮ろうとする撮影クルーが、カリスマ的なベンの言動に影響され、次第に犯罪に荷担していく。えっ、これって本物のドキュメント? と思うぐらい本物らしい犯罪モキュメントの傑作だ。
 ぐんとミステリーよりならばオーストラリア産のモキュメント『レイク・マンゴー ~アリス・パーマーの最期の3日間~』が本格的なモキュメントだ。十六歳の少女、アリス・パーマーが家族とピクニックに行った先で行方不明になり、映画は娘を失った家族の記録として撮られている。当時の記録画像、インタビューなどを交え、映画は徐々に彼女の死の原因へと迫っていく。本当に地味な、深夜テレビのドキュメント映像を見ているような気分になる構成なのだけれど、作りは丁寧で謎の解明も凝っている。
 日本でも『ありふれた事件』同様の犯罪モキュメント映画が作られている。『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズでもいくつかの作品を監督している白石晃士の『超・暴力人間』と、そのセルフリメイクである『超悪人』がそれだ。
 白石監督は精力的にモキュメントを作り続けている監督で、犯罪モキュメントだけではなく、2005年に電波系オカルトモキュメント『ノロイ』を、2009年にはその名もずばり『オカルト』という犯罪実話系オカルトモキュメントを、2010年には大人気のアイドルグループ「ももいろクローバー」を起用して撮った幽霊屋敷探検モキュメント『シロメ』と、日本のモキュメント界(んなものがあるかどうかは知らないが)において帝王の名をほしいままにしているのである。
 特に私は『オカルト』の前半での緊迫感あふれるドキュメントぶりと、ラスト近くの唖然とする展開の落差が好きだ。そして最後に残されたとされる映像の、「あなたの知らない世界」の再現フィルムじみたチープで悪趣味な、動くアウトサイダー・アートを思わせる悪夢のような映像の面白さは見物だ。
 そして日本でモキュメントを語るならこれを抜きにしては語れないのが『放送禁止』シリーズだ。ある事情があって発表できなくなった放送禁止のドキュメントフィルムを、ビデオとして発表するという形式をとっているこのシリーズは全部で六作作られており、どれも優れたモキュメントであり、同時にミステリーであるとも言える。綾辻さんもお好きなこのシリーズ。モキュメントという形式に興味があるのなら見て損はない。
 犯罪モキュメントとオカルトという組み合わせで、一つだけずいぶん昔の作品なのだけれど紹介しておきたい作品がある。
 オリジナル・ビデオ作品の『世紀末の呪い 増殖(1997年)』である。
 動機が不明な三つの残虐な殺人事件には共通するある事実があった、というオカルト系のモキュメントなのだが、ここで再現フィルム的に描かれる「いじめ」や「ひきこもり」の、肌触りまで感じられるリアルに厭な感じの演出は抜きん出たものがある。その胸を掻き毟りたくなるような厭な描写の素晴らしさで、オカルト部分の「らしさ」は補強され、すべてが本物のドキュメントであると錯覚するほどだ。もし何かで見ることが出来るのならご覧いただきたい。ま、確かに厭な気分になるだけですけどね。

 ノンフィクションの顔をしたフィクションで有名な本といえば『鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活』や『秘密の動物誌』がある。これらは学術書の体裁をとったフィクションだ。これと似た構造を持った映画が『ドラゴンズワールド』だ。ルーマニアの氷河で氷漬けになった中世の騎士とドラゴンのミイラが発見された、という科学ドキュメントの体裁が取られている。
 ドラゴンが実在したという仮定で作られたCG画面では、白亜紀に存在した母ドラゴンが子ドラゴンを守るためにティラノザウルスと戦う再現画像とかが見られる。最後ドラゴンがティラノザウルスに翼を毟られながらも、火を吹いて辛勝。た、楽しい!

 この延長線上にあるモキュメントが『トロール・ハンター』だ。
 ノルウェー王国の政府機関であるトロール保安機関(TSS)に所属するハンターと知り合った三人の学生たちが、その存在を隠そうとする政府に対しトロールの真実を映像によって記録しようとした映画がこれだ。まさかムーミンがこんな姿だと知られたらノルウェー政府もたいへんですからね。いや、本当はそんな話じゃないです。
 巨大なトロールの造形も、その登場の仕方も、怪獣映画的に楽しめる。モキュメントとトロールの好きな方は必見。

 最後に前回の『だから前をよく見て運転しろよ』の巻で、横から走ってきた車にいきなり目の前の人物がぐしゃりと轢かれるのは『ファイナル・ディスティネーション』であると私は書いちゃったのだけれど、神代創さんから以下のご報告を頂いた。

1998年の『ジョー・ブラックをよろしく』でブラッド・ピットがワンカットで車にはねられるシーンがあります。もちろん木っ端微塵にはなりませんし、血も出ませんが。参考までに。

 なるほど。交通事故の唐突さっていうのをドラマに使うのはホラーが初めてじゃないのですね。残念。でもブラピはビチャって潰れないんですよね。チッ。いや、なんでもないです。
 神代さん、ありがとうございました。
 タイトルを出した映画に関しては出来るだけ観るようにしておりますが、記憶に頼っている部分も多く、それ以外にも今回のような思い違いもあると思います。もしお気づきでしたらお教えいただけると有り難いです。その他にも、ご意見ご感想及び質問やリクエストなどがありましたら、気楽に下記投稿フォームまでご連絡くださいまし。
SF Prologue Wave投稿フォーム
 お待ちしてます。

 ところでこれって採用した方になんかプレゼントとかするってどうっすか。そうしたら一般の方からも感想とか送ってもらえるかもよ。運営の皆様。
 電波ビラ柄のTシャツとか銃創タトゥシールとか。悪趣味だからヤメなさいって? 失礼しましたー。

●文中の作品リスト

『新耳袋』
『怪談新耳袋』
『ほんとにあった!呪いのビデオ』
『ほんとにあった怖い話』
『怪談実話系ベスト・セレクション』
『お昼のワイドショー』
『世界残酷物語』
『グレートハンティング』
『食人大統領アミン』
『食人族』
『川口浩探検隊シリーズ』
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』
『パラノーマル・アクティビティ』
『パラノーマル・アクティビティ2』
『パラノーマル・アクティビティ第二章』
『パラノーマル・アクティビティ3』
『グレイヴ・エンカウンターズ』
『邪願霊』
『未知との遭遇』
『THE 4TH KIND フォース・カインド』
『妻が夫をおくるとき』
『宇宙戦争』



牧野修プロフィール
YOUCHANプロフィール


牧野修既刊
『死んだ女は歩かない 3
――命短し行為せよ乙女』