「Swing the sun 2」片理誠(画・小珠泰之介)

(PDFバージョン:Swingthesun2_hennrimakoto
 ロッカーから取り出したヘルメットとグローブを装着すると、ジェストは簡易宇宙服のままステーションの外へと出た。具体的には宇宙港の桟橋からレンタルした艀(はしけ)に乗って、だが。
 しかたなく俺もつきあう。艀と言ったって剥き出しのエンジンにフレームと申し訳程度のシートをくくりつけただけの無骨なシロモノだ。残念ながら美女とドライブって趣じゃない。
 安っぽい手すりにつかまっていると、宇宙空間に浮かんでいる蒲鉾型の構造物が見えてきた。全長は三〇〇メートルほどか。
 あれよ、と無線で彼女。
《あの中に目当てのブツがあるの》
 よく見ると薄汚れた外壁に“ダットン商会”と書いてある。いったい何屋なんだ?
 まぁ、一言でいえばガラクタ屋ね、とジェスト。
《古い機械類を色々と集めているらしいわ》
 へぇ、と俺。
《宇宙ステーションのそばにこんなところがあったなんてな。浮島型のドックを丸ごと一つ借りてるわけか》
《所有者らしいわ、この施設の。元はエンジニアだったとか》
《今は引退して悠々自適のコレクター暮らしってわけか。それとも骨董商なのかな?》
《半々てところじゃないかしら。偏屈な機械人という噂よ。このステーションの名物男の一人というわけ》
《だが……こんなところに来てどうするんだ。偽装用の装備でも手に入れるのかな? それとも囮用の船を組む気かい?》
 まぁ、任せといてよ、と彼女。
 艀を固定し、ドックの中へ。シャッターは上がりっぱなしになっていた。おかげで自由に品物を見て回れる。
 しっかしまぁ、よくこれだけ集めたもんだ、と感心してしまう。
 ドックの中にはぎっしりと金属塊が詰め込まれていた。そのほとんどは宇宙船の残骸だ。たぶんここの主にとっては残骸ではなくパーツってことになってるんだろうが、世間一般の感覚ではゴミだ、資源ゴミだ。
 特にエンジンが多い。いやぁ、どれもこれも古い。さび付いていて真っ黒だ。見たこともないような型のもあった。小型船用のものばかりだが、それでも一つ一つは大型車並の大きさにはなる。そんなもんが鉄骨を組んだだけの粗末なラックに何十も並んでいるのだから壮観だ。
 その中の一つの前で俺は停止する。
《おいおい、これは化学推進式の奴じゃないか。いったいいつの時代のエンジンだよ。博物館から掻っ払ってきたんじゃないのか。まだ動くのかな? 燃料のボンベはあるみたいだが……タンクはどこだ?》
 こっちよ船長、と彼女。俺を手招きすると、立体迷路になっているジャングルジムの中を進んでゆく。
 宇宙船用の電装品やら機械人のパーツやら、種々雑多なマシンのなれの果てが、汚れたコンテナの中に納められている。あるいはラックのフレームに直接鎖で縛り付けられている。
 ドックを貫く真っ直ぐな空間へと出た。うわぁ、という声をつい漏らしてしまう。
 周りはガラクタだらけだ。何千、何万というガラクタ。屑鉄屋なら大喜びしそうな光景だ。
 一応、それなりに整理整頓はされているらしい。ドックの一角には空きスペースと空っぽのハンガーまでもがあり、小型船程度なら今でも整備できるようになっている。メカニックとしての矜恃か、それともまだ細々と仕事を請け負っているのだろうか。
 ジェストが歓声を上げた。
《あった! あれよ!》
 推進剤を吹かして飛んでいく。
 その先にはけばけばしいオレンジ色に塗られた馬鹿でかい柱のようなものが三本あった。八〇メートル以上の長さがある。
《何だぁこりゃ?》と俺も近寄る。
 フフ、と通信機の向こうで彼女が自信ありげに微笑んだ。
《サン・スイング・レース、って知ってる?》
 ああ、と俺。おもむろに肯く。
《聞いたことがあるよ。“大破壊(ザ・フォール)”前に何度か開催されたことがあるっていう、死にたがり屋の連中が始めたはた迷惑な馬鹿騒ぎのことだろ。確かロケット・ブースターを何本もくくりつけた不ッ細工な宇宙船で太陽を一周して水星まで戻ってくるっていう》
《そう。そのレースのためのブースターとフレームが、これ》
 ほほう。
 なるほどね、とその骨董品の表面を撫で、《よく残ってたもんだ》とつぶやく。ロケット・ブースターは使い捨ての推進器だ。ひとたび使用されたらボロボロの残骸しか残らない。それがきちんとした形でこうしてここにあるってことは、つまり、命拾いした誰かがいたってことだ。
 太陽から離れすぎれば宇宙の彼方に吹っ飛ばされ、近づきすぎれば今度は太陽に真っ逆さまに落っこちて焼け死ぬ。サン・スイング・レースの別名は、地獄行きのジェットコースター。パイロットの母親たちは皆、泣きながら我が子に「乗るのならせめて外宇宙探査船にしてくれ」と懇願したという。当時の外宇宙探査船は出港したが最後、まず無事には戻ってこられなかった。まさに天国への片道切符だったってわけだが、それでもこの頭のイカレた地獄行きのジェットコースターよりはまだずっとマシだったんだろう。実際、このレースでは大勢が死んだらしい。今じゃこんなことをやる馬鹿はいない。
 まさしく阿呆の極みだな、と俺は笑う。
《こんなただひたすら真っ直ぐ加速するだけのシロモノで太陽を巡ろうだなんて、どう考えても正気の沙汰じゃない。助かったら奇跡だぜ。なぁ?》
 あはは、と笑う。
《これをあなたの船に装着すれば、もう誰も私たちに追いつけないわ》
 そうだとも、あっはっは………………へ?
 俺の笑いは凍り付く。
《え? おいおい、何を言ってるんだ? は? 冗談にも程があるぞ。馬鹿なことを言うもんじゃないぜ、子ネコちゃん。こんないつ爆発するかも分からないド旧式のロケット・エンジンをウルフにくっつけるって? 無茶なことはやめてくれ!》
《他にこのステーションから逃げ出せる手はないわ》
 あのな、と俺は頭部ユニットを押さえる。これだから素人ってのは怖い。馬鹿は天使の恐れるところに突進する、と言うが、まさしくそれだぜ。
《俺のラグタイム・ウルフは全長が二〇メートルそこそこしかないんだ! このロケットはどれも一〇〇メートル近いでかさじゃないか。手こぎボートに駆逐艦のエンジンを載せるようなもんだぞ!》
 だから?、と彼女。
《だから、じゃねぇよ! おかしいだろ、どう考えても! そりゃ確かにこいつでぶっ飛ばせばクソ重たい貨物船でもかなりの加速にはなるだろうよ。追いつけるのは最新鋭の高速艇くらいなもんだろうさ。けどこの手の固体燃料ロケットは制御ができない。花火と一緒で一度点火しちまったらもう止められないんだ。どこに吹っ飛ばされるか分かったもんじゃないんだぞ! おまけに骨董品もいいところだ! まともに作動するわけがない!》
《他に手がないの》
《あのな》
 ジェストは俺を無視し、壁に設置された通信パネルに向かって移動してゆく。
 俺はもちろん、両腕を振り回し、大声でわめき散らして抗議の意思を示しまくった。
《俺は嫌だぞ! 断固として拒否する! こんな無茶苦茶なプランに従えるか! もっとマシな方法がいくらでもあるはずだ! ちょっと落ち着いて考えようぜ、な?》
 だが女は俺になど一瞥もくれない。荒っぽい動作でキーを叩いては《おかしいな、呼び出しに応じない。留守かしら?》とぼやいている。
《人の話を聞けよ!》
 あ、やっと出た、と彼女。
《随分タイムラグがあるのね。金星まで? ビンテージ物の買い出し? まぁどうでもいいわ。ダットン、売って欲しいものがあるのよ。そちらにとっても悪い話じゃないわ。あなたのドックに転がっている馬鹿でかくて厄介なブツを高額で引き取ってあげてもいいわよっていう話。どう? こんな危険な爆発物、そちらも扱いに困ってたんじゃ……え? プレミア? 何を言ってるの? こんなガラクタに金を払う馬鹿なんているわけが……ちょ、ちょっと、ダットン! ダットンてば!》
 画面に向かって吠えている。やがて力任せにパネルをぶっ叩き始めた。どうやらは商談は不首尾に終わったらしい。
 俺はほっと胸をなで下ろす。まぁ、世の中、そうそう思い通りにはいかないよな。良かった、本当に良かった!
《交渉は決裂ってところみたいだな》と笑いかける。
《何なの、マニアって! 何を考えているのかさっぱり分からない! こんなの時代遅れのただのゴミじゃないの! それを、太陽系中の金を積まれたってお断りだって、馬鹿じゃないの!》
《ある意味、コレクターの鑑だな。誰にだって自分の命よりも大切なものの一つや二つはあるのさ》
 彼女は両腕を組んで考え込んでいる。ここだ、今しかない、とばかりに俺は畳み掛けた。
《な、プランを練り直そう。一度火星に行って、そこから金星行きの船を探す、ってのでどうだ? 何なら俺がもう一度、火星から金星まで船を出したっていいんだぜ。な、そうしようよ、ジェスト。急がば回れ、だろ。無用なリスクを冒すこたない。真の冒険者ってのは、退くべき時にはだな――》
《……分かったわ》
 よっしゃ、と心の中でガッツポーズ。
《おお、分かってくれたか。よしよし、いい子だ》
《盗みましょう》
 へ?
《はぁ? 盗むって何を? まさかこのロケット?》
 こくん、と彼女が肯いた。
《おいおいおい! 泥棒じゃないか》
《正義のための超法規的措置、よ。時間がないの。私だってこんなケチな窃盗、したくないわよ。でもしかたがないでしょ。他に有効な手がないんだもの》
 こっちをキッ、とにらんだ。
《X-リスクなのよ? 人類が滅びるかどうかの瀬戸際って時に、躊躇なんてしてられない! 一刻も早く金星の同志にこのカプセルを届けなければならないの! 遠回りなんかしてたら、敵の襲撃を受ける危険はどんどん高まってゆくのよ? 急がなくちゃ! 兵は神速を尊ぶ、という奴よ》
 ああ、何てこった、と俺は天を仰ぐ。
《ひどいのに雇われちまった……水星くんだりまで来て、こそ泥かよ。しかもこんなガラクタ!》
《いいじゃない、盗むにしてもガラクタなら、まだ多少は気が楽ってものよ。それにこのロケットだってこんなところで永遠に放ったらかしにされるより、最後にパッと一花咲かせる方が幸せよ》
《滅茶苦茶な理屈だ》
《もちろん後で弁償はするわ。お金で》
《……納得しねぇんじゃねぇかなぁ》
 俺は通信パネルの方を眺めながらつぶやく。
《まぁ、その辺りの交渉は組織に任せるしかないわね。だいたいこんな開けっ放しのドックの中に転がしとく方が悪いのよ。盗まれたってしかたがないわ。セキュリティがゼロなんだもの》
 だがこの時、俺は視界の隅で何かがちらと動くのを感じていた。
《どうやら、そうでもないらしいぜ》
《え?》
 ジェストを抱きかかえて物陰に隠れる。
 何かが宇宙空間をゆらゆらと漂っていた。いや、何かじゃない、あれはオクトモーフだ。知性化されたタコが、ドックの出入り口の向こうに二匹いる。
「……何あれ?」と彼女。ヘルメットを俺に接触させて、直接通話してくる。
「警備会社から派遣されてきたガードマン、てところかな。恐らく、この辺り一帯のドックの警備を請け負ってるんだろう。正規の会社かどうかは分からんが」
「ダットンの奴が通報したのね」
「不安になったんだろうよ。あんな剣幕で怒鳴ったりするからだ」
 タコどもはゆっくりとだが、こちらに近づいてきていた。まだ俺たちのことを見つけてはいないみたいだ。周囲を警戒している。
「どうしよう、船長」
「艀を見つけられちまった。そういつまでも隠れてはいられないぜ」
 ジェストに向き合う。
「俺たちはまだ盗みを働いちゃいない。だから片手を挙げて、よぅご苦労さん、と言いながら堂々と出て行くこともできる」
「嫌よ! それじゃあのロケットを盗めないじゃない! ダットンの奴はどうせ誰かをここに常駐させるよう指示したに決まってるわ!」
「ガード料、三割増しってところかな。気前のいいこって」
「今なら不意を衝けるじゃない」
「おいおい。警備会社全部を敵に回すつもりかよ」
「船長、X-リスクなの。もっと真面目にやって!」
 やれやれ。何て強情なお嬢さんだ。どうあっても自分のプランでいくつもりらしい。
 俺は渋々肯く。こうなったら覚悟を決めるしかねぇや。
「分かったよ。けど一気に忙しくなるぞ。速攻でウルフを改造して、速攻で水星から飛び出ないと、新手のガードマンがわらわらとやってくることになる。ここからは時間との勝負だ」
「望むところじゃない。丁度ここはドック。船の改造にはうってつけだわ」
「一つ約束してくれ。殺しはなし、だ」
「どうせバックアップデータから復活するわよ」
「にしたって気の毒だろ。いくら人類のためだからって、何も殺されるこたない。向こうは仕事をしているだけなんだ」
 ジェストが物陰からそっと外を覗く。
「けどあれ、オクトモーフよ? 宇宙空間でまともに相手をするには厄介な連中だわ」
「ああ。分かってるよ。……あまり頭のいい奴らじゃないといいんだけどな」
 タコだからって甘く見るわけにはいかない。いや実際、オクトモーフは敵に回すと恐ろしい連中なのだ。骨がないから狭い隙間にだって簡単に潜り込めるし、擬態して周囲に溶け込むなんて芸当もできる。まさに忍者。そしてその戦闘力は無重量空間でこそ最大限に引き出されるのだ。八本の手全てにレーザー銃でも握らせた日には、たった一匹で一個小隊並の戦力に化けやがるのさ。
 しかも場所が悪い。このドックの中はまるで岩礁みたいな複雑さじゃないか。連中にはまさにおあつらえ向きのステージだろうぜ。
 正面切って相手をするには不利すぎる。
 俺はジェストと手筈を打ち合わせた後、物陰から飛び出した。片手を挙げる。
《やぁやぁ、丁度良かった。あんたらダットンの部下? あいつ今、どこにいるんだ? 呼び出しても出ないんだよ》
 二匹は既にあと数十メートルの距離にまできていた。どちらも人間くらいの大きさのタコだ。白っぽいオクトモーフ用の宇宙服を着ている。慣れたもんで、姿勢制御バーニアを巧みに操って、まるで泳ぐようにドックの中を移動していた。案の定、どちらも拳銃タイプの武器を何丁かずつ手にしている。こりゃやっぱり正面切っての喧嘩はしたくねぇな。
 俺は両手を掲げて丸腰であることをアピールする。
 二匹は《チュー?》と顔を見合わせていた。知能はさほど高くないタコのようだ。助かった。
《いや、ほら、うちのステーションも今は会計監査の時期だろ。貯まりに貯まってるこのドックの登録料やら資産税やらをもういい加減に払ってもらわないと、俺がボスに怒られちまうんだよ。あんたらここの社員なんだろ? 違うの? は? 女ぁ? いや、ここには俺しかいないぜ。警備会社? おいおい、ちッ、ダットンの奴! さては悪巧みをしてやがんな。ん? ああ、担がれたんだよ、あんたらは。おおかた盗難保険でもだまし取ろうって腹なんだろうさ》
 よくある手だよ、と肩をすくめる。
《ありもしない骨董品に保険をかけて、泥棒に入られたと通報し、あんたらを使ってそれを証明する。で、かけておいた盗難保険をごっそり、て寸法だ。けど、今日びの保険会社は馬鹿じゃないぜ。徹底的に調査するに決まってる。すぐに尻尾をつかむだろうよ。いいのかい? このままだとあんたら、共犯にされちまうかもしれないぜ?》
 二匹は再び《チュー?》と顔を見合わせた。不安そうにそわそわと触手をくゆらせている。
《俺が偶然この場に居合わせたのはおたくらにとって幸いだったよなぁ。俺はあんたらの無実の証人さ。え? 俺の身分証明コード? ああ、いいとも。お安いご用だ。ついでにあいつの連絡先を教えてもらえるとありがたいね。あそこの通信パネルには登録されていなくてさ。メモリーが飛んじまったのかな。何? 金星? いや、でもそんな設定なかったぜ。さっき一覧で探したんだ。おかしいな。ちょっと見てくれるか》
 俺は通信パネルに向かう。
 手招きすると二匹も武器を収め、ゆっくりとこちらにやってきた。
 と、次の瞬間には突然発生した高温高圧のガスの噴流をもろに浴びて、ドックの反対側の出入り口から外へ吹き飛ばされる。まるで埃のように。悲鳴を上げる暇もなかったと見え、無言での退場となった。自分たちの身に何が起きたのか、突然すぎてあの二匹には分からなかったに違いない。



 やったわ船長、とジェストから通信が入る。
《この化学推進式ロケットエンジン、ちゃんと動いた! やっぱり船長のにらんだとおりだったね》
 ああ、まぁね、と俺の方は歯切れが悪い。
 飛ばされていったタコたちのことを思うと、どうしても気が重くなるのだ。戦闘用の宇宙服を着ていたのだから、あの程度の炎で焼きタコにはなっていないとは思うが。
 ジェストがこちらにやってきた。
《警備会社があの二匹を回収するには、あと五時間はかかると思うわ》と瞳を輝かせている。
 俺は二匹が救難信号を発しているのを確認し、やれやれとぼやく。確かに信号はどんどんと遠ざかってゆく。
《あ~ぁ、心が痛むぜ、まったく。……後で彼らに甲殻道楽の食い放題チケットでもプレゼントしてやってくれよな、埋め合わせとしてさ》
 了解、とジェストが明るく親指を立てる。自分が吹き飛ばしたってのに、悪びれた様子すらもない。まったく、呆れたもんだ。
 彼女が拳を打ち鳴らした。
《さぁ、急がなくっちゃ! あと五時間でやっつけないとね!》
 じゃあ船長は船を持ってきて。その間に私は準備を整えておくから。けどブースターを接続することを考えると普通のハンガーでは小さすぎるわね、どうしよ……あ、それじゃあそこのアームを使わせてもらいましょ。あっちの入り口から入って、あの辺りに止めてよ。あたしがアームでつかまえるから、と嬉しそうに指示を出してくる。場を仕切るのが好きな性格らしい。
 もっとも、俺もほんの少しだけほっとしてはいた。ほんの少しだけね。これで彼女に宇宙港に泊まっている“貴婦人とドブネズミ”を見せずにすむだろ? え? いや、そりゃ俺だって気になんかしたかないし、しないさ、もし“貴婦人”の方が俺の船だったんならばね。
 俺は肩をすくめると、もやっておいた艀へと向かう。
 船長、と呼び止められ、途中で振り返ると、ジェストが無邪気に手を振っていた。
《速攻っていう言葉、私、好きになれそうよ》
 やれやれ、だ。
 (つづく)



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