「東日本大震災について」町井登志夫

(PDFバージョン:higasinihonndaisinnsainituite_matiitosio
 このたびの震災で被災された方々および関係者の方、心よりお見舞い申し上げます。
 一日も早い復興復旧を心底お祈りいたします。

 ここではそれでも日本は負けない。ということについてしゃべりたい。
『想定外』だの『千年に一度』だの喧伝された震災の爪痕は信じられないくらい悲惨だ。被災地の痛ましい姿は見ていられない。
 わたしは生命について語る力量はない。小さくお金の問題についてしゃべります。それだけでも状況は想定外である事は間違いないから。
 震災被害は簡単な試算でも二十兆円は超えるということだ。日本の国家税収の半分以上をつぎ込んでも回復できないという計算になる。これにくわえて原発被害がある。原発による汚染被害までくわえればひょつとしたら日本の1年分の税収を超えるかも知れない。つまり管さんや枝野さんや野党さんや、警察や自衛隊ほか全ての公務員さんが一年間飲まず食わずで仕事をしてもらって、さらにゴミ収集や小学中学への補助とかも国による行政サービスも一切なしにしていただいてそれでもなおかつ追いつかない被害であるということです。
 韓国の新聞は『日本沈没』という見出しを立てた。実際日本は1メートル近く沈んでいたらしい。経済的にも世界第2位の地位を中国に明け渡したとたんである。もうこのまま沈没か。
 日本国民の絶望の度合いを測る指標は簡単なところに存在する。日経平均株価である。
 株は国民が楽観的になれば上がる。絶望すれば下がる。会社が将来もうかると思われれば株は買われる。未来は明るいと思えば買われる事によってどんどんあがる。逆に倒産するとかもうもたないと思われれば株は投げ売りされる。平均株価はそう言った人々の感情の均衡値である。
 では地震が起こってはじめて開いた東証株価。月曜日。
 大暴落であった。きわめて現実的だ。日本人は日本社会に悲観したのである。
 数値的には?
 現在(2011年3月31日)のところ最安値8200円台。下げ幅は先週に比較して十パーセント。
 そう。たった十パーセント。実は絶望したのはわずか1割の者に過ぎなかったのである。残りの9割はそう思っていなかったのだし、実際すぐに株価は戻しているのである。
 最安値八千二百円という数値にしても、小泉内閣の頃やリーマンショックの頃には七千円台にまで下がっていた。それに比べれば今度の地震は被害の大きさから計算すれば驚くほど下げなかったと言っていいくらいだ。
 日本人は『小泉内閣』には絶望したが『東北関東大震災』には絶望していないのである。 もちろん株価が戻したと言っても震災前の半分だ。当然だ。前途は多難なのだから。ここに置いても平均株価はきわめて「現実的」なのである。
ところで外国がこの地震災害にあった日本を『沈没船』と見ているかどうかも指標は存在する。
 為替だ。
 誰だって破綻しかねない国の通貨なんて持っていたくない。すぐに安全な通貨に変える。リーマンショックでドルが沈んだように売られて下がる。
 ところがご存じのように日本円は暴騰していた。1ドル75円を超えて。
 各国の通貨介入によってようやく円安に寄ったが今も一進一退で円高に振れようとしている。
 日本に比べれば遙に軽微な被害と犠牲者だけだったニュージーランドドルが地震の後下げ続け、いまだに震災前に値を戻していないのとは全く逆だ。
 これはどういうことか。
 諸外国は地震が起きた日本をかえって警戒しているのである。極端な復興力によってたちまち回復してしまうのではないか。目の前で奇跡が起きるのではないか。そう言う期待と不安でパニックになったように円は買われていた。
 この現象はそうだとしか考えようがないのだ。
それでは期待に応えるしかないだろう。
 日本はこんなことくらいで折れたりはしないし、必ず復興する。内外の数値がそれを示している。



町井登志夫プロフィール


町井登志夫既刊
『歴女カオルの「良いお金」と「悪いお金」の経済学』