カテゴリー: ルポルタージュ

「片山真理展 セルフポートレートとオブジェ」関 竜司

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1・片山真理と人形的身体

 義足のアーティスト・片山真理は、日常生活に自身の人形的身体を溶け込ませるセルフポートレイト(自撮り写真)で有名だ。瀬戸内国際芸術祭(2016)の際にとられた夕焼けをバックに凛と立っているポートレイトは、背景の赤と被写体の黒が対照的な秀作だ(図1:片山真理「bystander」(第三回瀬戸内国際芸術祭)(2016))。2016年11月25日、筆者は岡山ルネスホール(金庫棟ギャラリー)で開かれた「片山真理展 セルフポートレートとオブジェ」を訪れた。初期の作品から全部出しという触れ込みにも興味がわいた。
 私たちは普段、自分の身体を機械的なもの・物質的なものと思っていない。むしろ感覚的・感情的・精神的なものと思っている。それらを統合したのが「人間的」とよばれる感覚だ。健常者である私たちが身障者をみて違和感を感じるのは、自身の身体が実は物質であることに否応なく気づいてしまうからだ。
 しかし、と片山のポートレイトは問いかける。身障者の身体と健常者の身体に差異などあるのだろうか。むしろ社会の中で私たちは多かれ少なかれ、何がしかの役割を演じて生きている。そのことを考えれば、私たちは人形として――ロボットにできないことをするロボットとして――生きているに過ぎないのではないか。日常生活の中にスタイリッシュに差し込まれた片山の人形的身体は、そのことをごく自然に自覚させる。
「義足している私ってかわいいでしょ? 女の子なんだから自分をかわいく見せるのは当たり前!」と、写真の中の片山は言い切っている。そしてその姿は確かにかわいいし、かっこいいのだ。

「屋根の上の馬頭琴弾き――クグルシンとネルグイ――」関 竜司

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 2016年1月31日、岡山県総社市・スタジオ・ザ・ブーンで「遊牧の民の調べ」と題するドンブラと馬頭琴のコンサートが行われた。
 ドンブラとは、カザフ民族を代表する楽器で、二本の弦からなるギターのような楽器だ。リヤス・クグルシンは、ドンブラの第一人者でモンゴル政府から第一文化功労者勲章を授与されている。
 クグルシンは「二人で」という曲の弾き語りをはじめた。朗々とした歌声が、会場内に響く。解説の西村幹也氏によると、この曲はモンゴルではよく知られた曲で、本来ならクグルシンが歌ったあと、その場にいる全員が、それに続けて即興で歌わなければいけないものであるらしい。西村氏はドンブラ奏者の演奏にあわせて、家族全員が歌っていく光景をみてモンゴル・カザフ民族の文化レベルの高さに感動したという。(恐らくわが国の連歌や歌垣も、このようなものであったろう)。
 ただし一度うたわれた歌は忘れられ、二度と歌われることはない。記録には残さないけれども、常に新しいものを作ることができる。それがモンゴルやカザフの遊牧文化なのだ。

「ウォーゲーム研究大会・参加談―イギリスで戦略をプレイするということ」蔵原大


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《ウォーゲーム研究大会・参加談―イギリスで戦略をプレイするということ》

蔵原大(東京電機大学非常勤講師)



■1.始めに

 2015年09月08日~10日、ロンドン大学キングス・カレッジにおいて非常にSF的なイベントが催されたこと、ご存知でしょうか。ゲーム的手法をもとに武力紛争のメカニズムを解明する学問領域「紛争検証学」(Wargaming)の研究大会です。正式名称は“Connections UK 2015”( http://professionalwargaming.co.uk/2015.html )。

 本大会の主催者はフィリップ・セイビン教授(Philip Sabin)。参加したのはゲーム研究書『無血戦争(The Art of Wargaming)』( www.amazon.co.jp/dp/toc/4894250136 )の著者ピータ・P・パーラ(Peter P. Perla)をはじめとするアメリカ、イギリス、フランス、そして中立国スウェーデンから来た約100人の軍人、官僚、大学教員たち。なお大会中で偶然にも、いま話題の「集団的自衛権」にちなんだウォーゲームが行なわれたことは、注目に値するのではないでしょうか。

 本記事の筆者である蔵原大(Dai Kurahara)はセイビン教授に招待され、日本人で唯一参加しました。この貴重な大会“Connections UK 2015”の概要を、セイビン教授の許可を得てここにご紹介します。

 願わくは「紛争検証学」の専門的所見が、政治や戦争に真面目なご関心を持たれるSFファンのお役に立ちますように。

《Fig 01. 大会開始前の最終準備中》

「日経『星新一賞』創設記念シンポジウム・ルポ」宮野由梨香

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 2013年8月7日、東京大手町の日経ホールで行われた「日経『星新一賞』創設記念シンポジウム」へ行ってきた。
 面白いシンポジウムだった。
 シンポジウムの内容については、既に〈日本経済新聞〉2013年8月30日(金)朝刊14面の全面にわたって詳細な報告がなされている。それをお読みの方も多いだろう。
 このルポでは、私、宮野由梨香が面白く思ったことを取り上げて書かせていただきたいと思う。アンバランスな記載と感じられる向きもあるかもしれないが、どうかご容赦願いたい。

「ヒューマノイド見学会」片理誠

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 日本SF作家クラブと日本ロボット学会のコラボレーション企画として、産業技術総合研究所知能システム研究部門のヒューマノイド研究グループが研究をされているヒューマノイドの見学会が2013年5月27日にあり、私も同行をさせて頂いてきました。


 秋葉原でSF作家クラブ側の参加者の方たちと待ち合わせた後、一路、産業技術総合研究所のあるつくば市まで。いやぁ、つくばエキスプレスって速いッスね(汗)。途中で大先輩の方々に「どうやったら企画って通るんですか?」とか、色々と切実な質問をしたりしてました。つくば市に着いた後も送迎バスの中から見たJAXA(宇宙航空研究開発機構)の建物にテンションが上がったり、緑の多いつくばの町並みに感動したり。
 産業技術総合研究所も広大な敷地の中にあって、沢山建物が建っているんですが、周囲を大きな木々に囲まれているという素晴らしい環境の中にありまして、また丁度新緑がまぶしいくらいに美しい季節で、天気も素晴らしく、天国の森に迷い込んだような気分でありました。


 ヒューマノイド研究グループでは主任研究員である梶田秀司さんをはじめとする皆様から、主に“HRP-4C”というヒューマノイドロボットを見学させて頂きました。

「藤元登四郎さんを励ます会」&「第8回日本SF評論賞贈賞式」レポート 忍澤勉

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 2月1日(金) ホテルフロラシオン青山 孔雀の間にて

 天気予報の通り、東京地方は暖かな午後を迎えていた2月1日、ホテルフロラシオン青山の孔雀の間で、「第8回日本SF評論賞贈賞式」と「藤元登四郎さんを励ます会」が開催された。
 私がここに来るのは3回目だ。最初はもちろん昨年の評論賞の贈賞式で、カチカチになった心と身体のまま、表参道の迷宮にはまりつつどうにか到達した。そして2回目は夏の臨時総会。全身汗まみれでついた席はなぜか最前列。最初に一言コメントを求められ冷や汗もかいた。
 ということなので、3度目は余裕のはずが、なんとレポーター役を仰せつかり、また別の緊張感を携えて表参道駅から歩み出した。

「田中光二さん300冊記念パーティ」&「第7回日本SF評論賞贈賞式」ルポ 宮野由梨香

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 2012年2月1日(水)の夕方、私、宮野由梨香は東京メトロの表参道駅からホテルフロラシオン青山への道を急いでいた。午後6時半から催される「田中光二さん300冊記念パーティ」&「第7回 日本SF評論賞贈賞式」に出席するためである。
 昨年もこうしてこの道を歩いていた。毎年、場所はここなのだ。部屋も同じ、一階の「はごろも」の間である。
 まず受付で名前を書き、ネームプレートを胸につけて会場に入る。
 入ってすぐの机の上に、「田中光二著作リスト」が山と積まれていた。
 思わず手に取ろうとしたら「あ、これは帰りに配ります。カードに、一番お好きな作品名と、それについての一言をお願いします」と、名刺大のカードを渡された。
「田中光二さまというと、思いだすのは、大学のゼミで……」
 宮野は、評論賞チームの岡和田晃さまを相手に、自分の学生時代(ホンの30年ほど前よ♪)の話を始める。
「『田中冬二についてレポートしろ』と言われて、でも、宮野はね~、田中冬二を知らなくて、『田中光二なら、よ~く読んでいますけど…』って答えたのよ。近代詩の野山嘉正教授に」
 四季派の詩人よりも「エデンの戦士」の作者の方が、もちろん、はるかにメジャーに決まっている!

「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」体験レポート 岡和田晃

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 《写真提供:(C)Fujiko-Pro》

■そうだ、ミュージアムへ行こう!

 藤子・F・不二雄は日本が誇るSF作家です。彼が描き出すSF――すこし(Sukoshi)・ふしぎ(Fushigi)という控えめな呼称で出される作品群――は、SFの裾野を広げただけではなく、何気ない日常の片隅から、驚くべきセンス・オヴ・ワンダーを掘り起こしてみせました。その夢と希望、そして文明批評の精神に満ちた作品群は、今や、日本のみならず世界各地にまで広がりを見せています。現に1970年に誕生した『ドラえもん』は、40年以上を経た現在、アジア各国の子どもたちに圧倒的な共感と支持を集め、ロシアやフランスなどのヨーロッパ各国、ブラジルなどの南米等でも親しまれるようになっています。
 そんな藤子・F・不二雄の世界を存分に楽しむことができる施設「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」が、本年9月3日(*1)、満を持してオープンしました。構想から開設まで10年以上をかけたというミュージアムには、直筆の原画およそ5万点が所蔵されており、その中から来場者に向けて、現在は130点あまりが展示されているということです。


「ロボット演劇ルポ」高槻真樹

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 ロボットが俳優となり、人間と共に舞台に立つ。劇作家の平田オリザ氏とロボット研究者の石黒浩氏が手を組み、大阪大学でプロジェクトを進めている。報道で知ったときにはいささか奇抜な印象を抱いたものだが、実際に見てみると、予想しなかったほどにドキドキさせられた。確かにSFファンなら一度は観たい、と思う。とはいえ、それはあくまでハード的な関心なのだと思い込んでいた。だが違った。架空ではない実在のロボットが物語の上に乗って登場するということが、とても興奮させられるのだ。


『ロボット演劇』

「星新一展~2人のパイオニア~」ルポ 高槻真樹

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 兵庫県宝塚市の手塚治虫記念館にて、「星新一展~2人のパイオニア~」が開催された。今春に世田谷文学館で開かれた「星新一展」が作家・星新一の全体像を俯瞰するものだとしたら、今回の展示は手塚治虫との友情に焦点を当てたもの。結果的に、SFの存在感が高まっているのがとてもうれしい。世田谷展とはまったく違う展示物ばかりが集められている。

「第6回日本SF評論賞贈賞式」ルポ 宮野由梨香

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 2011年2月2日(水)の夕方、宮野は地下鉄の表参道駅からホテル・フロラシオン青山への道を急いでいた。6時半から催される「第6回・日本SF評論賞贈賞式」に出席するためである。カラカラ天気の続く東京は、その日もよく晴れていた。風もなくて、この時期としては非常に暖かな日であった。