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「ゼノアーケオロジスト2」山口優(画・小珠泰之介)

(PDFバージョン:xenoarcheologist2_yamagutiyuu
 互いに向き合った一瞬の後。
 侵入者が銃口をアシュルに突きつけるのが速かった。
 刹那、アシュル・レヴィナスは、意を決した。唯一の武器であるレーザーパルサーを侵入者に向けて投げつけ、両手を、相手の銃撃を防ぐように構える。普通に考えれば完全に狂ったような行動。全くアシュルを利さず、彼の生存の確率を崖底に蹴り落とすような。
 事実、僅かに動作が遅れたものの、投げつけられたパルサーにも全く怯まず、侵入者は光条を放つ。
 アシュルは目を見開く。
 光速でアシュルの胸と侵入者の銃口を結ぶ見えたコヒーレント光の線――。
 しかし、目的地まで到達する直前、アシュルの構えた両手の手前で停止し、小さなエネルギーの塊になって、眩い光とともに四散した。


「ゼノアーケオロジスト」山口優(画・小珠泰之介)

(紹介文PDFバージョン:xenoarcheologistshoukai_okawadaakira
 キレのよい名短篇「サブライム」をご記憶だろうか? その作者・山口優が、『エクリプス・フェイズ』のシェアードワールド小説企画に帰ってきた。その証左が、この「ゼノアーケオロジスト」である。
 本作は単体でも充分に愉しむことができるが――さほど時間はかからないので――できれば「サブライム」と併せて読んでみてほしい。総合芸術家エステル・レンピカをめぐる運命の風景が、より重層的なものとして受け止められるはずだから。

 “ゼノアーケオロジスト”とは、聞きなれない単語と思われるかもしれないが、これは『エクリプス・フェイズ』世界では「異星考古学者」のことを指す。奇しくも「Role&Roll」Vol.104では、サンプル・キャラクターの「アルゴノーツの異星考古学者」が公開されているので、併せてご覧いただきたい。
 ただ、今回の小説で活躍する「異星考古学者」は、サンプル・キャラクターの設定とは異なる部分も多い。本稿で重要な役目を果たす異星考古学者、アシュル・レヴィナスは、SF作家たちが集まってプレイした『エクリプス・フェイズ』のゲーム・セッションにおいて使用されたキャラクターだからである(キャラクター・デザインにあたっては、山口優が提示したコンセプトのもと、Analog Game Studiesが細部の数値設定等の協力を行なっている)。
 本作は連作短篇として今後も続いていゆくようだが、「サブライム」と「ゼノアーケオロジスト」が緩やかな繋がりを有しているように、アシュル=山口優の冒険は、いっそう重層的なものとなってゆくことだろう。

 山口優は『シンギュラリティ・コンクェスト 女神の誓約』で第11回日本SF新人賞を受賞した。続く『アルヴ・レズル ―機械仕掛けの妖精たち―』は第7回BOX-AiR新人賞、およびBOX-AiR新人賞年間最優秀賞に選出された。いずれも、『エクリプス・フェイズ』に興味があれば、大満足違いなしの力作ポストヒューマンSFである。
 とりわけ、『アルヴ・レズル』は、若年層の読者へ向けてポップな装いで出された本格SFで、神経細胞通信ナノマシン(ナーヴセラー・リンカー・ナノマシン)や、アーリー・ラプチャー(全世界で突如起きた、精神喪失事件)といった設定で人間の「魂」と「肉体」の意味を鋭く問うている。
 この『アルヴ・レズル』はマルチメディア展開を開始しており、通常版のほか、『アニメミライ2013』参加作品として劇場公開もされたアニメ版のDVDが同梱された限定版も販売されている。加えて、漫画家・天羽銀によるコミカライズ版の第1巻が、講談社シリウスKCより刊行された。これらも見逃せないだろう。余談だが、イラストレーターの小珠泰之介は、これらヴィジュアル作品を鑑賞したうえで、今回のイラストを仕上げてくれた。(岡和田晃)



(PDFバージョン:xenoarcheologist_yamagutiyuu
「メレケト、どう思う?」
 小惑星44ニサ――即ち三七〇〇京トンの岩石と氷の塊――の軌道上を周回するスペースシップの中で、アシュルはそう呟いた。
 アシュル・レヴィナス。
 訳あって生まれ落ちてから一〇年の歳月しか経っていないが、外見は二〇代の青年である。一年前にタイタン自治大学を卒業し、フリーランサーの異星考古学者(ゼノアーケオロジスト)として、最近漸く評判が上がってきたところだ。
 彼が見下ろすように眺める44ニサは、自然の小惑星ではあり得ないことに、その表面にもまばゆい光が点在し、点滅している。
 このジャガイモ型の、長さ一一〇キロメートル、直径六〇キロメートルの小惑星は、その内部が縦横無尽に掘り尽くされ、蟻の巣、または蜂の巣に喩えられる様相を呈している。内部は一気圧の大気が満ち、このほぼ無重力の環境下に、約一〇〇〇万の人々が暮らしている。エクストロピア――それが、この小惑星内に形成された宇宙都市の名だ。
 アシュルは、この44ニサに本拠地を置くハイパーコープ――スキンセティック――の関係者から、つい先程まで聞かされていた話を思い返していた。