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「貌を描く」井上剛

 ダガーマンは、商品タグの九十九神だ。屑篭を出て、広い世界への旅に出るのだ。体に付いたままのタグには何か特別な役割があるはずだった。ダガーマンの冒険は今始まったところだ。
 オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。

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電子総合文藝誌『月刊アレ!』 Vol.18

(文責:片理誠)

『月刊アレ!』 Vol.18

 電子総合文藝誌『月刊アレ!』の2013年2月号は 【日本SF作家クラブ50周年記念小説特集】 と銘打たれたSF大特集となっております。

 巻頭対談のゲストとして瀬名秀明さんが登場され、『大空のドロテ』の創作秘話やSFに対する思いを語られている他、日本SF新人賞や小松左京賞の出身者(13名)が「消失!」を共通のテーマに設定して短編SFの競作にチャレンジしております! 各人各様、13通りの「消失SF」の妙味をご堪能くださいませ!

「SF Prologue Wave編集部新春のご挨拶」(画・図子慧)

(PDFバージョン:SFPWsinnshunn


①ペンネーム
②肩書き
③SFPWの編集として新年にあたって一言
④今年のお仕事などの活動予定 
⑤SF的アンケート
 a.神になって世界のなにかを変えられるとしたら、なにを変えますか?
 b.タイムマシンを作るとしたら、どんなルールを作りますか?
 c.ペットにしたいクリーチャーは?
⑥一言

「道を開く」井上剛

 インキオス・イエローは大量の再生紙の中で起動した。ブラック、シアン、マゼンタはどこだ?廃棄物として記憶を取り戻すインキオス・イエローはシュモクザメのようなキレハムシに出会う。ここで朽ち果てるのか?この小宇宙からの脱出と新たな旅立ちは可能なのか? 「モノが魂を持って動き出す!怒り狂う怪物、奇跡を起こす妖精。時を超え、姿を変えて現れる不思議のかずかず。オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。

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「方舟」井上剛

(PDFバージョン:hakobune_inouetuyosi
 吹き荒ぶ嵐を避けて、彼は方舟の中に閉じこもった。〈ノアの方舟〉の名を冠されたその巨大な建造物は、彼の周囲に生じた大洪水から身を守るために十分な強度を有していた。
 嵐が四十日間に及んだ時、彼は〈方舟〉の小部屋の窓から一羽の鳩――ではなく、九官鳥を放った。
 ほどなく九官鳥は彼のもとへ戻ってきた。そして、次のような会話を諳んじた。

「革命」井上剛

(PDFバージョン:kakumei_inouetuyosi
 俺は、北海道征服を企む革命的秘密結社、〈冬の屍〉の行動隊長だ。
 我が〈冬の屍〉は、腐りきった現代社会を破壊し、新たな社会を打ち立てることを最終目標としている。その手始めに、この国において地理的に独立性が高く、かつ一個の政体を樹立できるだけの地勢的経済的規模を有する北海道を我が物としようと企図して、この北の大地を活動拠点に選んだのである。
 長年、その存在を知られないよう秘密裏に活動してきた我が〈冬の屍〉であるが、遂に本格的な北海道征服作戦を実行に移すこととなった。

「消滅」井上剛

(PDFバージョン:shoumetu_inouetuyosi
 ある晴れた日のこと。一匹の犬が、大きな骨付き肉をくわえて道を歩いていました。
 犬は、ふと立ち止まりました。どうしたことか、すぐ目の前の地面の下から、自分と同じように骨付き肉をくわえた犬が、こちらを見上げているではありませんか。
 犬は、慎重に状況を見極めました。なぜなら以前、同じような状況で、ひどい失敗をしてしまった経験があったからです。

「よこはま・たそがれ」井上剛

(PDFバージョン:yokohamatasogare_inouetuyosi
 先日、何となく『よこはま・たそがれ』という歌を口ずさんでいたのだが、あらためて歌ってみると、これはなかなかに奥深い歌詞だなあと感じ入ってしまった。
 この歌は1971(昭和四十六)年の発表なので、僕はまだ七歳だったわけだが、当時はこの歌の言わんとしていることがまるで分かっていなかったのだ。
 冒頭、「よこはま たそがれ ホテルの小部屋」とあるが、当時の僕は、ホテルというのは単なる西洋風の宿泊施設だという知識しかなかった。しかしこの歌は、明らかに恋愛関係にある男女の別れを描いているので、ホテルと言ってもただのホテルではなかろう。

「電話」井上剛

(PDFバージョン:dennwa_inouetuyosi
『誕生日なのにごめんよ』
 電話の向こうで彼が言った。気にしないで、とあたしは送話口を手で覆って囁くように答えた。彼にはあたしの声以外、聞かせたくはなかったから。彼に向けたあたしの言葉を、他の誰にも聞かれたくはなかったから。
 今どき大学受験に専念するために逢うのを我慢するなんて流行らない。でも、そんな彼の生真面目さが好きだった。医学を学び、命を救うために働きたい。照れ臭い台詞がよく似合った。あたしもいつしか、彼と同じ道を歩きたいと思うようになっていた。

「縁日」井上剛

(PDFバージョン:ennniti_inouetuyosi
 十歳ぐらいの少女が白い浴衣の右袖をたくし上げる。好奇心をいっぱいに湛えた瞳。『がんばれ』という男の声に励まされて、紙製の網をおずおずと水槽に差し入れる。
「あの子、上手に掬えるかなあ」
 固唾を呑んで見守りながら愛子が尋ねる。私は何も言わず、静かに頷き返す。
 お目当ての金魚が決まったらしく、少女は袂を押さえて、慎重に腕を動かし始めた。
 が、ほどなく少女は口をへの字に曲げる。水槽の中の網は見えないが、どうやら取り逃がしたらしい。『惜しい』と男の声がした。

「悪魔」井上剛

(PDFバージョン:akuma_inouetuyosi
「好きな願いを一つだけ叶えてやろう」
 悪魔が俺のところへやって来てそう言った。
「どうせ、死後に魂を奪うとか言うんだろ?」
「ま、それは当然だな。あと、『不老不死』と『願いの数を増やす』は禁止だからな」
 前者は魂を奪えなくなるし、後者は有名な〈禁じ手〉らしい。
 死んだ後に魂がどうなろうがその時はその時だ。それより、何を願おうか。俺は悩んだ。

「抱擁」井上剛

(PDFバージョン:houyou_inouetuyosi
 秋の気配を馥郁と漂わせた風が緩やかに吹き渡る草原。周囲に人の姿はない。
 その風に身を委ねて、女は佇んでいた。何かを一心に祈っているようにも見える。
 男は、離れた場所から女の姿を眺めていた。

「辻真先インタビュー」宮野由梨香・井上剛

(PDFバージョン:interview_tujimasaki
「はじめまして。……さっそくですが、インタビューをお願いできますでしょうか?」
 日本SF作家クラブの総会で、この「公式ネットマガジンPW」の創刊が承認された時のことだ。会議が終わるやいなや、私・宮野は向かい側の席にいらっしゃった辻真先先生のもとへ走った。1961年生まれの宮野にとって「辻真先」は神様のひとりである。辻先生はその場で手帳をお開きになって、日時の設定をして下さった。
「しかし、辻先生のお仕事は膨大ですから、何かテーマを考える必要がありますね」
「では、初期のSFをめぐる状況について、話しましょうか」

イノウエ ツヨシ

井上剛(いのうえ つよし)
1964年生まれ。京都府出身。
『マーブル騒動記』で第三回日本SF新人賞を受賞。
2002年同作品にてデビュー。