タグ: 八杉将司

「まなざしの街2 メモされた未来」八杉将司

 失業中のアキオは、やくざの組長の愛人・理沙にひろわれて彼女の運転手をすることに。不思議な鉛筆のおかげで、ギャンブルに勝ち続けるアキオは、藤崎組と中垣一家の抗争に巻き込まれる破目に。オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。シリーズ内ハードボイルド青春群像シリーズ「まなざしの街」第2回。

「小学館eBooks」のページは こちら


「幻握」八杉将司

(PDFバージョン:gennaku_yasugimasayosi
 誰かがわたしの左手を握るようになったのは、小学校に入学して初めて教室の机についたときだった。
 わたしは長く病院にいたので保育所にも幼稚園にも通っていなかった。だからこんなたくさんの知らない子供ばかりがいる冷たいコンクリートの建物の中に一人放り込まれ、視線をロクに合わそうとしない大人に慣れないことを強いられることも初めてのことだった。硬いイスに座るわたしは不安で仕方なく、すぐにでも逃げ出したい気持ちでいっぱいになっていた。でも、逃げる勇気などわたしにはなく、机でじっと怯えて耐えるしかなかったのだが、そのときだった。誰かがわたしの左手を握るのである。その手は温かくて大きく、しかし、少し遠慮深そうにわたしの左手を包んだ。
 それがどれほどの安心をわたしにもたらしてくれたか。不安がすべて消えはしないが、顔を前に向けることはできた。
 それがその手との初めての出会いだった。

「まなざしの街1 眼差し」八杉将司

 コースケは19歳。酒もドラッグも身体に合わないから、スナック菓子にはまっている。バーの用心棒がシノギで、酔ったサラリーマン相手に、勘定をめぐる暴力沙汰も日常茶飯だ。暴力団組長の愛人になった昔の恋人、理沙も刹那的に生きるコースケを心配している。ある日、コースケの前に緑色の身体をした”ジジイの妖精”?が現れた。モノが魂を持って動き出す!怒り狂う怪物、奇跡を起こす妖精。時を超え、姿を変えて現れる不思議のかずかず。 オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。シリーズ内ハードボイルド青春群像シリーズ「まなざしの街」第1回。

「小学館eBooks」のページは こちら


「作家の質量」八杉将司

(PDFバージョン:sakkanosituryou_yasugimasayosi
 七月、ヒッグス粒子発見か、というニュースが駆け巡りました。
 その前もそれっぽいのを観測したかもという報道が流れましたが、あれよりも確実なデータが取れたというので今回大きく取り上げられてます。
 拙著の話になりますが、早川書房から出しました「Delivery」の一部の設定が、このヒッグス粒子が見つからなかったらという前提であんなことや、こんなことになるというところがあって、執筆しているときはヒッグス粒子は見つかってなかったのですが、出版が近くになって「そろそろ見つかるかも」といった話が出てきて、もし発見されたらどう修正しようかとはらはらいたしました。そんなことで冷や汗かいたのは日本中でぼくぐらいだったかもしれません。
 とりあえずまだヒッグス粒子であるとの確定はできておらず、限りなくそれに近い新種の素粒子と思われる観測データが見つかりました、という段階なので、某ウィスロー粒子の影だったなんてこともあるかもしれません。(ないって)

 ところで、ヒッグス粒子とは何? 質量を生むって話があるけど、どういうこと? といった疑問を持たれた方はたくさんおられると思います。ぼくも小説を書くために素粒子物理を勉強するまで、ヒッグス粒子なんて名前すら知りませんでした。

「北海道沈没」八杉将司

(PDFバージョン:hokkaidoutinnbotu_yasugimasayosi
 低い地鳴りが轟く。
 同時に大地が揺れた。
 それほど大きな揺れではない。でも、家具や棚がかたかた震える。
 ぼくは体を強張らせ、不安な気分で部屋を見回した。
 揺れの対策はしてあった。この程度でモノが落ちることはない。それでも地面が揺れると、根源的な恐怖がどうしても這い上がってくる。
 揺れがおさまったので、再び空中投影型のディスプレイに目をやった。

「Delivery」八杉将司


Delivery」ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
八杉将司(著)

早川書房
ISBN:978-4-15-209296-0
刊行日:2012/05/24
1,785円

あらすじ:
ノンオリジンの少年アーウッドは、天上に輝く月という”神の世界”に憧れていた。
だが、突如として起きた原因不明のスーパーディザスターにより、地球は災厄に見舞われた。
それから10年――。
荒廃した世界で仲間とともに生き延びたアーウッドは、地球と月をめぐる畏怖すべき運命に巻き込まれていく。
日本SF新人賞受賞作家が満を持して放つ、“誕生”の物語。
(早川書房ホームページより)

「沸騰する宇宙」八杉将司

(PDFバージョン:futtousuruuchuu_yasugimasayosi
 冬の近づきを知らせる冷たい風が吹き抜け、赤い陽射しが窓に差し込む夕暮れ時、気がついたら妻が蒸発していた。
 私は白い蒸気となって消えかける妻を逃すまいと、慌ててキッチンにあった大型のゴミ袋でその蒸気をかき集めた。しかし、一枚ではとても足りない。収納棚にしまってあったありったけのゴミ袋を取り出し、妻が座っていたイス周辺の空気をすべて袋に詰め込み、抜けないようガムテープでしっかり密封した。
 ぱんぱんに膨れ上がったゴミ袋は百個以上にもなって積みあがった。私はそれを眺めながら途方に暮れた。どうすればいい。どうすれば蒸発した妻を取り戻せる。
 こんな状態では元に戻せても生きているわけがないというのはなしだ。蒸発すること自体あり得ないことなのだから、常識に当てはめて考えるほうがおかしい。私は生き返らせることができると信じたい。
 とにかく気体になった妻を戻す方法である。

SF作家の書店「PlanetariArt」より電子書籍短編/「キングのアザーサイド」片理誠/「夜明けへの帰還」伊野隆之/「宇宙の終わりの嘘つき少年」八杉将司

BIGLOBEパブリッシング・SF作家の書店「PlanetariArt」(http://publish.biglobe.ne.jp/planetariart/index.html)にて先日ゴミ九十九神シリーズを出した片理誠、伊野隆之、八杉将司による書き下ろし新作SF短編が配信されました。



「キングのアザーサイド」片理誠
http://publish.biglobe.ne.jp/planetariart/bookshelf_0002/book_00000024/ja/index.html

「夜明けへの帰還」伊野隆之
http://publish.biglobe.ne.jp/planetariart/bookshelf_0002/book_00000025/ja/index.html

「宇宙の終わりの嘘つき少年」八杉将司
http://publish.biglobe.ne.jp/planetariart/bookshelf_0002/book_00000026/ja/index.html

「パンツと髪の毛と学生証」八杉将司

(PDFバージョン:panntuto_yasugimasayosi
 母さんが顔色を変えてぼくの部屋に入ってきた。
「これ、何」
 怒りに震える声でそう言いながら、手につまんだ小さなパンツをぼくに見せた。
 レースが施され、ピンクの花柄が散りばめられたかわいらしいパンツだった。当然女性用である。正確にはショーツというべきか。母さんのショーツでないことは間違いない。
 ベッドに寝転がってコミックを読んでいたぼくは答えた。
「知らない」
「ウソ言いなさい」と、母さんは決め付けた口調で言った。

「神が死んだ日」八杉将司

(PDFバージョン:kamigasinndahi_yasugimasayosi
 唐突に携帯電話の呼び出し音が教室に鳴り響いた。
 アユムは世界史の教科書を眉をひそめて教卓に叩きつけた。生徒たちを睨みつける。
「誰だ、ケータイの電源を切ってないやつ」
 生徒たちは慌てて机の中やカバンに手を突っ込み自分たちの携帯電話を確かめた。誰の呼び出し音でもないらしい。生徒は隣同士で顔を見合わせて困惑した表情を浮かべていた。
「あ」と、アユムはスーツの胸に手を当てて声を上げた。「すまん。先生だ。おかしいなあ、さっき電源を切ったはずなんだが」
 アユムは苦笑いしながら携帯電話を取り出すと、ディスプレイに目を落として眉をひそめた。

「ゴミ九十九神」シリーズ(電子書籍)



このほどBIGLOBEパブリッシング・SF作家の書店「PlanetariArt」にて、「ゴミ九十九神」シリーズが始まります。
http://publish.biglobe.ne.jp/planetariart/
NEC・BIGLOBEのプレリルームでも紹介されています。
http://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2011/12/22c

第一弾は「ジャンク・ジャンキー・ジャンクション」片理誠著、「ヒア・アイ・アム」伊野隆之著、「眼差し」八杉将司著の三作品がリリース。

「八杉将司『光を忘れた星で』インタビュー」聞き手・高槻真樹

(PDFバージョン:interview_yasugimasayosi


「光を忘れた星で」
八杉将司著
講談社BOX
http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=283765X

――八杉さん待望の新作ということで、事前に「こんな話なんだよ」とうかがってはいたんですが、予想とぜんぜん違って大変びっくりしました

八杉「えっ、そうだったんですか」

――全人類の目が見えなくなる小説なんだよ、ということでしたよね。ジョン・ヴァーリイの「残像」とかH・G・ウェルズの「盲人の国」みたいな感じかなと思っていたところ、全っ然そうではなかったという。

「幽霊」八杉将司

(PDFバージョン:yuurei_yasugimasayosi
 ぼくは本を読んでいた。
 読書が趣味で、休みの日は一人で買い込んだ本を読み漁っていた。
 でも、今、手にしている本はあまり面白い内容ではなかった。本屋でタイトルを見てつい衝動買いをしてしまったノンフィクションだったが、その著者の持って回った言いまわしにうんざりしていた。表現が違うだけで同じことを繰り返していたり、テーマと関係ない独りよがりな日常の持論を延々と語っていたりするのだからたまらない。とはいえ買ってしまったので読まなくてはなんだかもったいない。
 時刻は夕方で、小春日和の天気は部屋を気持ちよく暖めてくれた。
 そんな中でその本は、当然のごとく、ぼくを居眠りへといざなう。
 うとうとし出した。もう文字は目に入ってこない。まぶたが半分閉じていた。
 起きなければと思った。こんな中途半端な時間に昼寝なんかしたくなかった。
 だけど、体は動かなかった。
 指先一つ曲げられない。
 そこで人の気配がした。

小松左京さんを偲んで(寄せ書き)

(PDFバージョン:komatusakyousannwosinonnde
 本サイト「SF Prologue Wave」は、この度の小松左京さんの訃報に接し、SFにも、また日本SF作家クラブにも、多大なご貢献のあった氏に敬意を表し、ここに小松左京氏の追悼企画として、天国の小松さんへ会員有志による『寄せ書き』を捧げます。
 ただし、ここにあるものが全てではありません。『追悼エッセイ』としてご寄稿いただいた方もおられます。また、氏の訃報は我々会員にとって衝撃であり、「ショックで、今はまだ何も書けません」と申される方が多数おられたことも、ここに付け加えさせて頂きます。
 小松左京さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。(「SF Prologue Wave」編集部一同)

「ムカエニキタヨ」八杉将司

(PDFバージョン:mukaenikitayo_yasugimasayosi
 何事もない日曜の朝のはずだった。
 大学の男子寮のベッドで目を覚ましたぼくは、隣のベッドを見た。いつもなら同級生であるルームメイトが寝ているのだが、空っぽだった。日曜なのに珍しく早起きしたらしい。先に食堂にでも行って朝食を食べているのだろう。
 パジャマを着替え、洗面用具を持って部屋を出た。
 共有の洗面所には寮生の先輩がいた。

「ブライアン」八杉将司

(PDFバージョン:buraiann_yasugimasayosi
 それは中性子星が発する強力な電磁波ジェットに触れたのかもしれないし、巨大恒星による想定されていないほど強烈な恒星風のプラズマをかぶったのかもしれなかった。
 とにかく私が生活していた都市型の移民宇宙船は突然すべての機能が停止した。暗闇が訪れ、生命維持システムも故障する重大な事故が起きた。その後、火災や爆発が居住区画のあちこちから発生し、私たちは船から脱出しなければならなくなった。

ヤスギ マサヨシ

八杉将司(やすぎ まさよし)
1972年生まれ。兵庫県姫路市在住。
「夢見る猫は、宇宙に眠る」で第五回日本SF新人賞を受賞。
2004年同作品にてデビュー。ほかに「光を忘れた星で」講談社BOX、「Delivery」早川書房がある。

(ツイッター)
 https://twitter.com/yasugimasayoshi