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「おかえりヴェンデッタ」吉川良太郎

※本作は、岡和田晃編『再着装(リスリーヴ)の記憶――〈エクリプス・フェイズ〉アンソロジー』(アトリエサード)に収められました。


Ecllipse Phase は、Posthuman Studios LLC の登録商標です。
本作品はクリエイティブ・コモンズ
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http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/3.0/

吉川良太郎プロフィール


吉川良太郎既刊
『SF JACK』

 



「バタイユ・クトゥルー・ロックンロール」吉川良太郎

(PDFバージョン:bataiyukuturu_yosikawaryoutarou

「Eye Baloon」(The Museum of Modern Art, New York)
オディロン・ルドン(Odilon Redon, 1840-1916)


 えー。今回はジョルジュ・バタイユの話をします。
と言ったところで「お、ついにバタイユの話か!」と喜ぶ人がどれだけいるのかと書き始めてから思い至り、もう三行目でなにやってんのぼくはとまたしても自問せざるを得ないのですが。しかもそれを問うとバタイユ研究に費やしたぼくの青春が全否定されてじっと手を見てしまうのですが(あ、生命線も短いよ!)
しかし「知らないことを知りたい」という知的好奇心、これこそ現代の読書界から、特に若者の読書体験から失われて久しいものではないのか。

「日乗グルメ編」吉川良太郎

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 えー。今回は過去にミクシィ(公開はマイミク限定)で書いた日記から抜粋でございます。
 急な来客に冷蔵庫にあるもので一品こしらえるのが主婦の腕の見せ所。心に移りゆくよしなしごとをそこはかとなく書き散らした日記を寄せ集めてゼリー寄せなどにすると夏向きのオードブルに最適ですよ。どうやって!
 白状すればコラムの御依頼をいただいてなんも書くことがないんだが、ありものでお茶を濁そうという。料理に例えて書きだしたので、じゃあ食べ物関係の話でまとめてみよう。あと順序は適当なので季節感バラバラです。バラバラのバラはバラエティのバラだ。
「普段どんなものを食べているか言ってみたまえ。きみがどんな人間か当てて見せよう」(サヴァラン)
 ぼくは普段こんなことばかり考えてます。

「いいメロス」吉川良太郎

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 心の赴くままに諸々のテーマを書き散らしては途中で放り投げる。
という投げっぱなしジャーマンなこのコラムは実は確信犯的なスタイルで、あえて途中で終わることで、読者の皆様に続きはどうなるのだろうといつまでもワクワクしていただこう、なんなら自由に続きを考えていただければという、あれです、小泉八雲が『怪談』でやってたテクニックですね、そして昨今の若者において著しく衰退しているという「想像力」を賦活し、ひいては日本SFの興隆に資するという深謀遠慮? そう深謀遠慮(考えながら書くなよ)にもとづく遠大な計画の第一歩なのですよ!
 という屁理屈をヘンリさんに「ダメです」と一刀両断されて今これ書いてます。
 しかしあの続きは、続きはどうなったの! という読者の要望でもあれば別ですが特になんもないので、やはりこのあらかじめ失われた未完成コラムは続くのであった。


 学生時代、国文科に籍を置くXという友人がいた。
 Xというのはもちろんイニシャルではない。ていうかイニシャルがXってフランシスコ・ザビエルかプロフェッサーX(本名チャールズ・エグゼビア。これもザビエルの英語読みですな)くらいしか思いつかないんだが。まあそれはいいんだ。
 このXは現在、塾で小中学生に国語を教えている。
 で、ある日ひさしぶりにXと電話で話していたら、こんな話が出た。
「今の子供は『走れメロス』に感動しないんだよ。それより、なんでメロスはこんなにすぐキレるのって」

「パップラドンカルメのうわさ」吉川良太郎

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 あらかじめ失われ、永遠に出会えない幻の美味がある。
 ボードレールにシャンソンを囁いた酒瓶の妖精、プルーストの思い出を呼び起こす紅茶に浸したマドレーヌ、スタンリー・エリンのレストランでふるまわれる特別料理、ポー秘蔵のアモンティラード、チバ・シティでさらりまんがかっこむ牛丼とワカメのみそ汁、永遠の虚空に増え続ける栗饅頭、ゴンとドテチンが食らうマンモスの肉……

 ……気取った書き出しで始めたものの、どんどん庶民的な味に近づいていくのはぼくが庶民だからですが。マンモスの肉は庶民的なのか。それはともかく。
「フィクションに出てくる料理で一番うまいものはなにか?」
 というテーマは誰しも一度は考えたことがあるだろう。

「中二UMAは実在した! 2年C組放課後の教室に謎の少女を追え!」吉川良太郎

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「巨大怪蛇ナーク! タイ秘境底なし沼に恐怖の魔人は実在した!」
「謎の猿人バーゴンは実在した! パラワン島奥地絶壁洞窟に黒い野人を追え!」
「ワニか怪魚か!? 原始恐竜魚ガーギラスをメキシコ南部ユカタン半島奥地に追え!」


「声に出して読みたい日本語」と言えばまず筆頭に挙げるべきは
「『水曜スペシャル』川口浩探検隊のサブタイトル。全部」
 といえば同年代の男子諸君は今モニターの前で深くうなずいてくれていることだろう。うなずくよね。少なくともぼくはうなずくから続けるが。
 この闇雲なテンション。ワールドワイドなインチキ臭さ。「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」とスポンサー日本ハムのCMコピーと見事なマリアージュを果たした冒険のロマンチシズム。今にして思えば子供だましな企画なんだが、こっちは本当に子供だったのでコロっと騙されたものだった。

「ドラキュラ馬鹿一代」吉川良太郎

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 世に「ドラキュラ馬鹿一代」といえばルーマニア出身の俳優ベラ・ルゴシ(1882~1956)のことですが。いやたぶんぼくしか言ってないと思うが。そもそもこんなところにこんな話を書いて「ルゴシキター!」とか喜ぶ人がどれだけいるのかと三行目で思い至りなにやってんのぼくはと自問せざるを得ずじっと手を見ております(あ、頭脳線が短いよ!)
 えー。なんといいましょうか。ヘンリさんからコラムの御依頼を受けたんですが、実はあんまりSFの素養がない人間なので(実は、でもないか)前回は一応ぼくのホームであるところのフランス文学にからめた話でお茶を濁したものの、二度目となるとなにを書いたものやらこまってしまいまして。急な来客でなにも準備がないんだけど、そんな時は家にあるものを工夫して何か一品つくるのが主婦の腕の見せ所なのよ、と思って冷蔵庫を開けたら納豆とブルーチーズしかなかった。そんな心象風景。
 いいんだよ! 明日も明後日も使えないムダ知識の墓場、それがオレのコラムだ! と叫んでみてもまるで怪獣墓場のシーボーズの鳴き声のよう。

「昔は作品より作家の人生の方が面白かった」吉川良太郎

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「昔は作品より作家の人生の方が面白かった。今じゃどっちもつまらん」(C・ブコウスキー『パルプ』)

 昔、サドという男がいた。
 ドナチアン・アルフォンス・フランソワ・ド・サド侯爵。一八世紀フランスの名門貴族にして作家、といえば先祖代々の財産で優雅に生活し働かなくていいもんだからヒマもてあまして手すさびに小説でも書いてみようかしら執事よ口述筆記の用意をウィムッシュウ、という大変にうらやましい大変にうらやましい境遇を想像するが(本当にうらやましいので二度言いました)実際は放蕩生活の廉で人生の大半を牢獄か牢獄に等しい精神病院で過ごし、しかしその虜囚生活の中で書いて書いて書きまくった膨大かつ過激なポルノ小説が二十一世紀の現在まで読み継がれ、孤高の思想家と讃えられ、さらにはその名に由来する一般名詞までできたという作家である。

ヨシカワ リョウタロウ

吉川良太郎(よしかわ りょうたろう)
1976年生。新潟県出身。中央大学大学院仏文科博士前期課程修了(専攻はバタイユと二十世紀文学)
『ペロー・ザ・キャット全仕事』で第二回日本SF新人賞を受賞しデビュー。
ペンネームではなく本名であり「猫なら大吉、人間だと大凶」の画数。
好きな作家は澁澤龍彦、中井英夫、諸星大二郎、エフィンジャー、ギブスン。
妬ましい作家は澁澤龍彦、中井英夫、諸星大二郎、エフィンジャー、ギブスン。
近年の活動は映画『エヴァンゲリオン新劇場版』(脚本協力)、マンガ『解剖医ハンター』(原作)等。