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「黄泉の縁を巡る 1」片理誠(画・小珠泰之介)

(紹介文PDFバージョン:yominofutishoukai_okawadaakira
 この「黄泉の縁を巡る」は、片理誠の手になる『エクリプス・フェイズ』のシェアードワールド小説だ。大作であるために、「SF Prologue Wave」上では、連載という形で紹介していく。
 『エクリプス・フェイズ』には大別してスペースオペラ的な側面とサイバーパンク的な側面があるが、本作は『エクリプス・フェイズ』のスペースオペラ的な醍醐味を存分に堪能させてくれる痛快作だ。何はともあれ、まずは騙されたと思って本文を読んでみてほしい。迫力ある空中戦から始まる怒涛の展開に、あなたはきっと引きこまれて止まないはずだ。
 主人公のジョニイ・スパイス船長の設定は『エクリプス・フェイズ』のルールシステムに則って作成されたものである。その後、実際に片理誠はジョニイ船長を使って『エクリプス・フェイズ』のゲーム・プレイに参加している。その時のプレイしたゲームのストーリーと「黄泉の縁を巡る」との間に直接の関係はないものの、本作品はロールプレイングゲームのエッセンスに満ちたものとなっており、細部の描写も経験者ならではの躍動感に溢れている。
 なお、本小説には既存の設定を参考にしながら、作者が独自に想像を膨らませた部分がある(特に“大破壊”の描写や空中戦など)。あらかじめご了承されたい。

 片理誠は、第5回日本SF新人賞の佳作を受賞した『終末の海』(徳間書店)でデビューした後、ミステリやSFなど様々な要素を含んだエピック・ファンタジー『屍竜戦記』シリーズ(徳間書店)、量子論と多世界解釈をまさしくゲーム的に表現した本格SF『エンドレス・ガーデン』(早川書房)、近未来の東京で生体兵器とのハードなアクションで魅せる『Type: Steely』(幻冬舎)と、高水準の長篇を次々と発表している。領域横断的な作風が片理誠の特徴だが、本作は初の本格宇宙冒険SFということもあり、ファンにとっても要注目の逸品だ。

 本作品のアートワークを担当するのは、イラストレーターの小珠泰之介。「コミックFantasy」誌(偕成社)のファンタジーコミック大賞佳作入選経験もある描き手だが、長年にわたるSF読者でもあり、イメージ喚起力に優れたアートワークには独特のセンス・オブ・ワンダーがある。海外のイラストレーションとはまた違った味わいを堪能していただきたい。(岡和田晃)



(PDFバージョン:yominofuti01_hennrimakoto
 見上げるとバブル・キャノピーの向こう側に暗黒の海原が広がっていた。頼りなく瞬く手前の星々は、今にもその底に飲み込まれてしまいそうに思われた。
 あの向こうに無限の世界がある。思えばこんな超高々度哨戒機の操縦士に志願したのも、少しでも星の海に近づきたかったからなのかもしれない。
 もう少しだ、と俺は独りごつ。あともう少し金が貯まれば、こんな薄汚い惑星ともおさらばできる。潜りの工場どもが垂れ流す汚水にしこたま含まれる重金属やら環境ホルモンやらがこの地球をすっかり駄目にしつつある。海洋汚染だけじゃない。大気も大地も、どこもかしこも、有害な化学物質やら放射能物質やらにまみれようとしている。
 この地球こそが宇宙で最も美しい星だなどと利いた風なことを抜かす奴もいるが、見てもいないくせに何が分かるのかと俺は思うね。他人の思い込みなんぞに興味はない。金星、火星、そして木星圏や土星圏。あの向こうにはフロンティアがあるんだ。金さえあればそこへ行ける。俺はこんなゴミみてぇな星で終るつもりはない。のし上がるのさ。そのためにはチャンスをつかまなくてはならず、チャンスをつかむためには実力とコネ、そして金が要る。

コダマ ヤスノスケ


小珠泰之介(こだまやすのすけ)
 1975年新潟県生まれ。1998年「コミックFantasy」誌(偕成社)にてファンタジーコミック大賞佳作入選(別名義)。現在はイラストレーターとして活動中。
 ウェブ上で漫画も描いてます。「これは育児マンガではない」(http://dewanai.at.webry.info/