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【小松左京氏追悼エッセイ】「小松左京さんの思い出」新井素子

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 知の巨人なんて言葉があるけれど、小松さんに対する私の認識は、そんなものではない。あの人は……知の化け物ではないのか。
 小松さんとお話をしたことは何回もあるんだけれど、一番印象的だったのは、何人かでトゥールダルジャンで鴨をご馳走になった時のこと。おい、トゥールダルジャンの鴨だぞ、凄いな、こんなの、小松さんがご馳走してくださるんじゃなきゃ、まず食べられないぞ。(というか、複数の人間をトゥールダルジャンで奢ってくださるって……別の意味で、小松さん、凄い。)そう思ったのに、私は、「御飯大好き、おいしい御飯は人生の意義だっ!」って思っている人間なのに……なのに、不思議な程、この時の鴨の味は覚えていない。それ以上に、この時の小松さんが凄すぎたのだ。

「あけみちゃん」新井素子

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 あけみちゃんは、保育園の桃組さんです。
 桃組さんは、梅組さんより年下ですけれど、桜組さんのお姉さんです。
 だから、あけみちゃんは、桜組さんには、優しく親切にしないといけません。
 今日も、桜組さんの女の子が、滑り台の階段を登ろうとして転んで、擦り傷を作って泣いていたので、あけみちゃんは、その子を水飲み場まで連れていって、傷を洗ってあげ、保育園の先生にお願いしてバンドエイドをもらい、それをはってあげました。
 うん。あけみちゃんは、よいお姉さんです。

アライ モトコ

新井素子(あらいもとこ)
1960年東京生まれ、1977年、『あたしの中の……』で、“第一回奇想天外SF新人賞”佳作入選。1999年、『チグリスとユーフラテス』で第二十回日本SF大賞受賞。近著に『もいちどあなたにあいたいな』新潮社などがある。