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「NO,NO,NO,NO」片理誠(作・絵)

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 空間投影ディスプレイの中で若い女性の顔が大写しになる。それはあくまでも簡易的な平面スクリーンで、高度な3D処理など施されてはいない。画質もかなり粗いものだ。だがそれでも鬼気迫る彼女の表情を伝えるには十分だった。甲高い声がミッション・コントロール室全体に響き渡る。
「追い返せるわけないじゃないですか! 彼らは皆、世界共同機構の正規職員なんですよ? しかも著名な科学者や技術者ばかりです!」
 その広報担当者は、可哀想に、今にも泣き出さんばかりだった。だが、ここで情にほだされるわけにはいかない。山本は科学省、宇宙開発局、深宇宙探査室の室長として、眼前で儚げに輝いている、薄っぺらい、ハンカチ大の画面に向かって、彼女に負けじとあらん限りの声を張り上げる。
「とにかく駄目なものは駄目だ! 誰が何と言おうと今、部外者は断固としてお断りだ!」
「国際問題になります! 機構からの正式な推薦状も届いているんですよ!」
「そんなもんは“のし”をつけて、速達で叩き返してやれッ!」
 腕を払うジェスチャーで一方的に通信を遮断する。
 気がつくとぜぇぜぇと肩で息をしていた。ここ数日、口を開けば怒鳴り合いばかり。世界中が、非公式な形ではあったが、あれやこれやと圧力をかけてくる。
 くそったれめ、とつぶやくと、すぐ隣から「まぁまぁ」と声がかけられた。

「電子書籍・雑感」片理誠

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 小学館eBooksに『九十九神曼陀羅』、『夢幻∞シリーズ』という電子書籍の企画があり、私もそこに参加させていただいております。
 そこで、これまでに電子書籍を体験してみて個人的に感じたこと思ったことなどを、関わっている者の端くれとして(汗)、ここに綴ってみようかと思います。

「鏡の街」片理誠(作・絵)

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 カーテンの隙間から覗くと、街の外へ向かってまっすぐに伸びる道が、濡れたように光っていた。中天に浮かぶ満月がやけに明るい。だが上空に靄でもかかっているのか、それでいてくっきりとは見えず、まるで水銀のようにゆらめいている。
 辺りには煙霧のような闇。街路灯はとうの昔にすべて切れてしまっていた。
 時折吹く風が木々の梢を揺さぶる。狐や野ねずみ、兎といった野生動物たちも、今はじっと息を潜めている。
 やがて遠くから、くぐもった、地鳴りにも似た震動が、微かにし始めた。
 私は急いで窓のシャッターを下ろし、素早くカーテンを閉じて振り返る。
「奴がきたよ。さぁ、今夜の夜更かしはもうお終い。自分の部屋に戻りなさい」

「『ミスティックフロー・オンライン』第1話 冒険探偵(1)」片理誠


書名   :『ミスティックフロー・オンライン』第1話 冒険探偵(1)
作・絵  : 片理誠
出版社  : 小学館
出版日  : 2016/7/15
値段   : 200円 + 税
ASIN   : B01I17N6BS
      (Amazon Kindle版)

 小学館eBooksの「夢幻∞シリーズ」にて、『ミスティックフロー・オンライン』という作品を始めさせていただきました! 各電子書籍サイトでは試し読みも可能になっております! (特に「BookLive」さんでは、試し読みのボタンをクリックするだけで、登録作業や特別なアプリなしでも、お試し版をサクッと読めます♪ 「BookLive」のページはこちら

『ミスティックフロー・オンライン』の一番の特徴は、「小説を書いている本人が、イラストも描いている」というところなのかもしれません。「作・絵/片理誠」となっておりますように、どちらも私がやっております(汗)。こういうケースは今までもなかったわけではありませんが、それでも割と珍しい試みではあるかと。

 同一人物が手がけておりますので、コラボならではの妙味のようなものはないのかもしれませんが(汗)、その代わりに、作り手のイメージをストレートにお伝えできるのではないか、と考えております。良い方の面を出せると良いなぁと、期待しております(;^-^ゞ

 更に、電子書籍ならではのメリットの一つに「挿絵をカラーにできる」というのがありますので、この良さも是非引き出していきたいところです! せっかくの電書なわけですんで、紙媒体ではできないことにチャレンジしていきたいですよね!

 拙作『ミスティックフロー・オンライン』の概要は、以下のとおりです。

「あの世へ昇るエレベーター」片理誠

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 気がつくと暗がりに一人で立っていた。どこだ、ここは? 辺りを見回す。私は確か法廷にいたはずなのだが。
 何か、硬くて平らなものの上であることは、靴底からの感触で分かる。床、か。周囲はひんやりとしてはいたが、寒いというほどではなかった。完全な無風だからなのかもしれない。音は何も、いや……遠くからかすかに何かを叩くような響きが聞こえる。
 音のする方に振り返ると、遙か彼方に小さな明かりが見えた。

「カウントダウン・イン・ブルー」片理誠

いらないモノは徹底して捨てる。そう決めた俺の周辺で、カウントダウンのメモを送りつける不思議なイタズラが始まった。

整理整頓、いらないモノは徹底して捨てる。俺がそう決めてから、モノを捨てるたびに、青インクで書かれたカウントダウンの脅迫めいたメモが届くようになった。99から始まったカウントダウンがゼロになったら何が起きるのだ?

「小学館eBooks」のページは こちら


「空っ風と迷い人の遁走曲 2」片理誠(画・小珠泰之介)

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 脳波の遷移、血流の具合、脳内物質の分泌状況……、モニタに映し出されたのはどれもひどい内容のものばかりだったが、中でも最悪だったのが脳内のデータフローだ。
 神経細胞(ニューロン)間のメッセージは、パルス状の電気信号として伝導される。で、この信号の流れを非接触型高深度電磁センサーで大雑把に拾ってみたのだが、まるで世界中からこんがらがった綾取りの糸を掻き集めて無理矢理詰め込んだような有様だった。しかもそこら中に人為的な、直線の流れがある。滅茶苦茶だ。複雑怪奇にからまり合っている上に、強引極まりない乱暴な処置がこうもあちこちに施されてあるとは。まったく、見ていて吐き気がした。
 ひどいな、これは、と思わず声が漏れてしまう。

「空っ風と迷い人の遁走曲 1」片理誠(画・小珠泰之介)

(紹介文PDFバージョン:karakkazetoshoukai_okawadaakira
 片理誠の『エクリプス・フェイズ』小説「空っ風と迷い人の遁走曲」をお届けしたい。「黄泉の淵を巡る」、「Swing the Sun」に続く「ジョニィ・スパイス船長」シリーズ第三弾だが、前二作とは少し趣きを異にし、番外編的な仕様になっている。それゆえ、本作から読み進めていただいてもいっこうに問題ない。むしろ未読の読者は、本作を読んでから「黄泉の淵を巡る」に進んでいただくのがいいだろうか。

 さて、「SF Prologue Wave」の『エクリプス・フェイズ』小説では、火星を舞台にすることは、珍しくない。本作の舞台も火星だが、そのフロンティア的側面のダークサイドである、ダシール・ハメットのノワール小説を彷彿させる――『マルタの鷹』というべきか、それとも『血の収穫』か――陰鬱な雰囲気に、情報体(インフォモーフ)リラ・ホーリームーンが絡んでくる。

 本作が面白いのは、分岐体(フォーク)が重要なキーワードとなっていることだ。火星にフォークというと、齋藤路恵+蔵原大「マーズ・サイクラーの情報屋」が記憶に新しいが、片理誠の本作「空っ風と迷い人の遁走曲」は、角度を変えつつ内面描写よりもプロットの“謎”そのものへより踏み込んだ形で、この問題に向き合っている。『ブレードランナー』をはじめとしたディック原作映画がお好きな方は、ぜひ本作もひもといてみてほしい。

 2014年の片理誠は、待望の長篇『ガリレイドンナ ―月光の女神たち―』(朝日新聞出版)をリリースした。これは人気アニメのノベライズとなっているが、オリジナルのエピソードをもとに書かれており、スピードに満ちた圧倒的なドライヴ感は、原作を知らない読者でも充分に楽しめる。『ガリレイドンナ』が気に入った読者は、「ジョニィ・スパイス」シリーズもきっとお気に召すだろう。
 また、「SFマガジン」2014年6月号に発表されたジュヴナイル作品「たとえ世界が変わっても」では、、『エクリプス・フェイズ』と同様に大きな技術的進展を遂げた未来にて、祖父が遺したサポート・ロボット「ラグナ」と、それを受け継いだ少年や友人たちとの、心あたたまる成長物語が描かれる。ラグナはクラウドに接続されていないスタンドアロン型のサポート・ロボットだが、彼の描写は『エクリプス・フェイズ』に親しむうえで、大きく参考になるだろう。(岡和田晃)



(PDFバージョン:karakkazeto01_hennrimakoto
 目の玉が飛び出るようなクレジットを支払っても、購入できた商品は微々たるものだった。
 私はうんざりした気分で振り返り、自走式大型カートの中身を確認する。
 自家発電用の大型水素ボンベ二本と、クロレラのパウチが三、これは食料としてではなく、循環型空調システムの補充用のだ。私の家にあるのはバイオ方式なので、植物の力を使って酸素を生み出す。あとは食料。合成タンパク質のブロックが一つに、煉瓦のように硬いパンが二斤、様々な藻類や豆類の缶詰(中身はペーストだ)を幾つか。あとはチョコレートバーやクラッカー、粉末ドリンク、スキムミルク、ビタミン剤、等々。
 やれやれ、とずり落ちかけた眼鏡を中指で押し上げる。
 まったく情けない。これが真っ当な人間の生活だろうか。食料なんて、大昔の兵士に支給されていたと言う野戦食と大差ないくらいではないか。贅沢らしい贅沢と言えるのは、三リットルほどのミネラルウォーターだけ。水は燃料電池からも生み出されるのだが、なぜか私はそれを口にすると腹を下してしまうので、しかたなくそちらは全て空調システムの方に回して、自分用のはこうして街で購入することにしている。
 それにしても、まったく住みづらい世の中になったものだ。この界隈も今は不景気で、その一方で税金は天井知らずの勢いで高くなってゆくばかり。甘い汁は、私のような者のところにまではなかなか回ってきてはくれない。

「見えないチカラ」片理誠

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 悪いな、つき合ってもらっちゃって。
 え? あ、いや、大丈夫、大丈夫。男だってたまには羽を伸ばさなきゃ。家にはカミさんがいるから、平気だよ。
 そりゃ、赤ん坊ってのは何をやらかすか分からないけどさ。特に最近、うちのは這い這いを覚えたんでね。片時も目を離せないってのはある。けど、そう四六時中じゃこっちも保たないよ。育児ノイローゼって奴? ああ。あれになっちまう世のお母さんがたの気持ちも分からないではないね。実際、大変だよ、子供の面倒を見るってのはさ。ま、独身のお前に言ってもピンとこないかもしれないけど。
 とにかく、こうして久しぶりに会えたのは俺にとっては僥倖だ。ちょうど外で一杯やりたいと思ってたところなんだよ。ちゃんと奢るからさ。ちょっとの間、つきあってくれ。

「ガリレイドンナ ―月光の女神たち―」片理誠



書名: 『ガリレイドンナ ―月光の女神たち(Moonshine Fortunes)―』

作者: 片理誠

出版社: 朝日新聞出版

出版日: 2014年2月20日

ISBNコード: ISBN978-4-02-251153-9

値段: 1200円


(作者より)
 2013年の10月からフジテレビの深夜アニメ枠『ノイタミナ』で放送されていたテレビアニメ作品、『ガリレイドンナ』。その小説版が本作になります。

「Swing the sun 4」片理誠(画・小珠泰之介)

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 金星に到着した後も彼女の機嫌は全然良くならなかった。
「船長は散々私のことを無茶だの滅茶苦茶だのとののしってくれたけど、その言葉はそっくりそのまま、ううん、倍にしてあなたに返すわ! 何なのよ! こうして生きていられること自体、奇跡としか呼びようがない! 今まで散々あちこちを旅してきたけど、こんなひどい旅は生まれて初めて!」
 実際ひどい有様だった。顔面は青ざめ、頬はこけ、髪はボサボサ。せっかくの美人が台無しだ。目の下には隈までできてる。

「Swing the sun 3」片理誠(画・小珠泰之介)

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 サン・スイング・レース用の無骨なフレームに愛船を固定し、各種のインターフェースケーブルを接続する。
 船内に戻ってロケットブースターエンジンからの電気信号を確認。今のところはきちんとリンクできているみたいだ。
 実際にはそう神経質になるほど沢山のチェック項目はない。何しろ点火した後はせいぜいロケットの取り付け角度を変更することくらいしかできない。まともな制御など受け付けてはくれないのだ、この野蛮極まりないエンジンは。
 それでも、何しろやったことがないチャレンジなので、俺の神経はささくれる。本当にこれでいいのか。何回チェックしても気が休まらない。元々俺はソフトウェア回りがあまり得意ではないのだ。
 こんな時にリラがいてくれたらなぁ、と思ってしまう。彼女ならあっという間にチェックどころかシミュレートまで何重にも完璧にし終えて、今頃は「大丈夫よ、船長。後は運を天に任すしかないわ」と言ってくれていたはずだ。

「物語性の復活を目指して」片理誠

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 電車に乗っていると「本当に時代は変わったなぁ」とつくづく感じる今日この頃です。

 以前の電車内での風景と言えば、学生は漫画、社会人は雑誌か文庫本、というのが定番だったものですが、もはや老若男女の誰もがスマホですな。あらゆる世代を席巻している感じです。あの浸透力は凄いですね。前なんか、向かいの座席に座っていた七、八人の乗客全員がそれぞれ自分のスマホを覗いていたという、コントみたいな場面を目にしました。座っている人全員が「じっと手を見る」状態っていう。でも違うんです、本当はスマホ見てんです。でももうそんな光景、さして珍しくもないですよね。

 この前もつり革につかまっていたら、左右に立っている人と向かいに座っている人の全員がスマホでパズルゲームやってました。流行ってますよねぇ、ソーシャルゲーム。年代も性別もバラバラなのに、皆が一心不乱にパズルゲームをやってるってのは、なかなか凄い光景でしたよ。

 そういえば昔の知り合いにテトリスが異様に上手い人がいて、その人はテトリスならワンコインでいつまででも遊んでいられるんです。何時間やっても全然ゲームオーバーにならないんですよ。凄まじい速さでブロックを積み上げて片っ端から消していっちゃうんです。途中で本人も飽きてくるらしくて、わざと失敗した組み方をして自分をピンチに追い込んでおいて「あと一回失敗したらゲームオーバーになってしまう」っていうところから、目にも留まらぬ早業でシパパパパパッ! とブロックを組んであっという間にリカバリーする、という荒技まで披露してくれたり(笑)。なんでそんな上手いんですか、って聞いても、本人の中でも完全に自動になってしまっているらしくて、特にコツとかはなさそうな感じでしたね。パズルゲームって中毒性があるのかも。

「Swing the sun 2」片理誠(画・小珠泰之介)

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 ロッカーから取り出したヘルメットとグローブを装着すると、ジェストは簡易宇宙服のままステーションの外へと出た。具体的には宇宙港の桟橋からレンタルした艀(はしけ)に乗って、だが。
 しかたなく俺もつきあう。艀と言ったって剥き出しのエンジンにフレームと申し訳程度のシートをくくりつけただけの無骨なシロモノだ。残念ながら美女とドライブって趣じゃない。
 安っぽい手すりにつかまっていると、宇宙空間に浮かんでいる蒲鉾型の構造物が見えてきた。全長は三〇〇メートルほどか。
 あれよ、と無線で彼女。
《あの中に目当てのブツがあるの》
 よく見ると薄汚れた外壁に“ダットン商会”と書いてある。いったい何屋なんだ?
 まぁ、一言でいえばガラクタ屋ね、とジェスト。
《古い機械類を色々と集めているらしいわ》
 へぇ、と俺。
《宇宙ステーションのそばにこんなところがあったなんてな。浮島型のドックを丸ごと一つ借りてるわけか》
《所有者らしいわ、この施設の。元はエンジニアだったとか》
《今は引退して悠々自適のコレクター暮らしってわけか。それとも骨董商なのかな?》
《半々てところじゃないかしら。偏屈な機械人という噂よ。このステーションの名物男の一人というわけ》
《だが……こんなところに来てどうするんだ。偽装用の装備でも手に入れるのかな? それとも囮用の船を組む気かい?》
 まぁ、任せといてよ、と彼女。

「Swing the sun 1」片理誠(画・小珠泰之介)

(紹介文PDFバージョン:Swingthesunshoukai_okawadaakira
「これからSF Prologue Waveの『エクリプス・フェイズ』小説を読もうと思うのですが、どの作品から始めたらいいでしょうか?」
 ――イベントなどで、このような質問を受けることがある。

 SF Prologue Waveは「SFマガジン」の「てれぽーと」欄に毎号、紹介文が掲載されている。なかでも、この『エクリプス・フェイズ』企画は、ゲーム雑誌「Role&Roll」でも毎号、紹介されている。
 これまでSFに興味があっても、なかなか手を出せずにきた人たちがいる。
 それが『エクリプス・フェイズ』をきっかけとして、SFの世界を覗いてみようと考えてくれているわけだ。

 あるいはその逆。
 SF作家クラブ50周年記念のブックフェアやイベントを通して、SFの魅力を再発見してくれた人たちがいる。
 今は、前代未聞のSF短篇アンソロジー・ブームが到来しているが、実のところ、昔ながらの宇宙冒険SFの割合いはそんなに高くないように思われる。
 ブルース・スターリング『スキズマトリックス』やアレステア・レナルズ『啓示空間』の系譜に連なる、ポストヒューマンな宇宙冒険SFはないものだろうか?
 そういう方々が、『エクリプス・フェイズ』に興味をもってくれている。

 むろん、これまで紹介してきた『エクリプス・フェイズ』小説は、いずれも世界の魅力を存分に引き出しつつ、個々の作家の個性が遺憾なく発揮されたものだ。
 いずれも甲乙つけ難い完成度にある。つまり、どの作品から読んでいっても大丈夫。
 そう、太鼓判を押すことができるだろう。

 だが、仮に涙を呑んで一作に絞るならば、今回から連載される片理誠(現SF Prologue Wave編集長)の新作「Swing the sun」が、入門にぴったりな逸品ではないか。
 なぜ「Swing the sun」がオススメなのか?

 ひとことで言えば、抜群の安定感。そして圧倒的なリーダビリティ。
 丁寧な筆致は『エクリプス・フェイズ』世界を理解する格好の教材にもなるだろう。

 いま、SF界で最も熱いテーマとも言われる“ポストヒューマン”を正面から扱いながらも、どこか懐かしさを感じさせるレトロフューチャーな雰囲気。
 アウトローを描きながら、どこかあたたかみを感じさせる筆致。
 野田昌宏編のアンソロジー『太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊』、収録作のなかでは、エドモンド・ハミルトンの『キャプテン・フューチャー』のようなスペース・オペラの名作にも通じるだろうか。
 そしてアクション、怒濤のアクション!
 “日本SFの夏”を代表する作品だとすら思うが、さすがに言葉が過ぎるだろうか。
 けれども、片理誠は、この「Swing the sun」に一つの勝負をかけている。
 その気迫を、君も体感してほしい。

 毎号、多量のSF小説を読みこなす気鋭のイラストレーター・小珠泰之介の手になる、美麗なイラストが付記されるのも見どころだ。

 なお、宇宙船にまつわる各種設定、ならびに“ダイソン・リング”の設定には、著者が想像を膨らませた部分がある。

 「Swing the sun」に興味をもっていただいた方は、続いて、ジョニィ・スパイス船長が活躍する「黄泉の縁を巡る」に進んでみてほしい。(岡和田晃)



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 居住区同士をつなぐ通路の左右。シートの上に並べられているのは、どれも使いふるされた、シケた品ばかりだった。
 半分以上の発光パネルが切れちまってる上に、残りの半分も消えかかっているもんだから辺りは大層薄暗い。剥き出しのステンレスに囲まれた、いかにも古くさい宇宙ステーションの一角といった感じの場所だ。貨物車両が二台すれ違えるかどうかの幅しかない。ここでは何もかもがすっかりどす黒く変色しちまってる。居並ぶ奴らも、通り過ぎてゆく奴らも。
 もっとも、薄暗いからまだ商売になっているのかもしれない。日の下にさらされたなら、たちまち盗品であることが露見しそうなデバイスばかりだった。

「ヒューマノイド見学会」片理誠

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 日本SF作家クラブと日本ロボット学会のコラボレーション企画として、産業技術総合研究所知能システム研究部門のヒューマノイド研究グループが研究をされているヒューマノイドの見学会が2013年5月27日にあり、私も同行をさせて頂いてきました。


 秋葉原でSF作家クラブ側の参加者の方たちと待ち合わせた後、一路、産業技術総合研究所のあるつくば市まで。いやぁ、つくばエキスプレスって速いッスね(汗)。途中で大先輩の方々に「どうやったら企画って通るんですか?」とか、色々と切実な質問をしたりしてました。つくば市に着いた後も送迎バスの中から見たJAXA(宇宙航空研究開発機構)の建物にテンションが上がったり、緑の多いつくばの町並みに感動したり。
 産業技術総合研究所も広大な敷地の中にあって、沢山建物が建っているんですが、周囲を大きな木々に囲まれているという素晴らしい環境の中にありまして、また丁度新緑がまぶしいくらいに美しい季節で、天気も素晴らしく、天国の森に迷い込んだような気分でありました。


 ヒューマノイド研究グループでは主任研究員である梶田秀司さんをはじめとする皆様から、主に“HRP-4C”というヒューマノイドロボットを見学させて頂きました。

「レギオン・チューナー・ラプソディ」片理誠

 TVレコーダーの中に潜む邪悪な九十九神集団「レギオン・チューナー」。宅配便が運び込んだ先は、AV器機オンチの女子大生・由理ちゃん。人間への復讐に凝り固まった九十九神たちの魔手が迫る。
 オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。

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「作家ンちのわんこ」片理誠・青井美香・久美沙織

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(タイトル画像河田ゆうこ)
うさぎさんの写真も入る予定でしたが、諸般の事情(おもに担当者の怠慢)によって掲載は延期になりました。

おわびといってはなんですが、先月、掲載できませんでした写真をば。

溺愛されてます。

①片理誠(作家)

我が家の愛猫です。美人でしょう?

「ハッピー・キーパー」片理誠

三人の女子中学生に拾われた洗濯バサミ。彼女たちの目的は?集まった五つの九十九神はジャングリラを目指せるのか?
オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ。」

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「カウントダウン」片理誠

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「ぃよぅ、おはよう!」
「あ、おはようございます、先輩」
 朝、会社に行く途中でT先輩と会った。先輩は基本的にいつも明るい人なのだが、今朝はいつにも増して上機嫌で、それが僕にはちょっと不思議に思えた。
 と言うのも、昨日行われた会社の健康診断で先輩は散々な数値が出てしまい、問診の先生にこっぴどく叱られていたからだ。元々一目でそれと分かるメタボ体型な人だったのだが、ここ数年で更にその貫禄は増しており、とうとう医師の逆鱗に触れるまでになってしまったらしい。
 今までは「俺は“メタボ”なんじゃない、“めかたがボーン”なだけだ」などと冗談を言っては、健康診断の結果などどこ吹く風と笑い飛ばしていたのだが、さすがに昨日はこたえたらしく、帰宅してゆくその後ろ姿は気の毒なくらいにしょげかえっていた。
 それがたったの一晩でこのハイテンション。何かあったのだろうか?

電子総合文藝誌『月刊アレ!』 Vol.18

(文責:片理誠)

『月刊アレ!』 Vol.18

 電子総合文藝誌『月刊アレ!』の2013年2月号は 【日本SF作家クラブ50周年記念小説特集】 と銘打たれたSF大特集となっております。

 巻頭対談のゲストとして瀬名秀明さんが登場され、『大空のドロテ』の創作秘話やSFに対する思いを語られている他、日本SF新人賞や小松左京賞の出身者(13名)が「消失!」を共通のテーマに設定して短編SFの競作にチャレンジしております! 各人各様、13通りの「消失SF」の妙味をご堪能くださいませ!

「決闘狂」片理誠

(紹介文PDFバージョン:kettoukyoushoukai_okawadaakira
 第2期『エクリプス・フェイズ』シェアードワールド小説企画の第5弾は、片理誠の新作「決闘狂」だ。
 これは傑作である。何はさておき、この血と硝煙に満ちた世界を堪能してほしい。あなたの五感に訴えかけるものがあるはずだ。

 本作は、今まで「SF Prologue Wave」で発表されてきた『エクリプス・フェイズ』小説のなかで、もっともポストヒューマンSFの王道に近い作品だと言えるかもしれない。
 SFにおけるポストヒューマンを考えるにあたり、大分して二つの流れが存在する。一つは、伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』にて大胆な再解釈が施されたことが記憶に新しい、ロシアの神秘主義思想家フョードロフに代表される、ルネッサンス期に確立されたヒューマニズム、すなわち人間中心主義の延長線上で広義のポストヒューマニズムを考えるもの。情報体(インフォモーフ)の身体性に切り込むことで、この主題に挑んだものとしては、「SF Prologue Wave」で発表された「Feel like making love――about infomorph sex」のような作品がこの系譜にあたるだろう。
 もう一つは、人間の魂(エゴ)がデジタル化したことがすでに自明となり、近代文学的な内省のあり方を根底から塗り替えた、いわば「人間機械論」の系譜に連なる、ポストヒューマン時代のハードボイルドとも言うべき作品群だ。
 恐甲(ダイノクロム)軍団の一員として戦う、知性を有した超戦車の一人称を採用し――スティーヴ・ジャクソン・ゲームズの傑作ゲーム『オーガ』に多大な影響を与えたと言われる――キース・ローマーの《BOLO》シリーズ(「最後の司令」と「ダイノクロム」が邦訳済み)、あるいは徹底して内面描写を廃した戦闘機アズラーイールのエッジの利いた描写が蠱惑的なピーター・ワッツ「天使」が、その代表格と言えるだろう。
 そして「決闘狂」は紛れもなく、後者の系譜に属する快作である。密度の濃い文体に詰め込まれた戦闘描写の妙味、永久に続く凄惨な殺し合いの苦味に酔いしれよ。2013年の幕開けにふさわしい、ポストヒューマニズムの現在形が、ここに映し出されている。このような迫力ある作品が、日本人でも書けたのだ。英語で紹介されれば、評判を呼ぶことは間違いない。

 『エクリプス・フェイズ』ファンにとっては、第1期で「黄泉の縁を巡る」を連載していた片理誠は、もはやお馴染みの書き手と言ってよいかもしれないが、本作はどことなくユーモラスな調子も漂う「黄泉の縁を巡る」とは、タイプが異なる作品だ。片理誠は、作品中にSFやファンタジー、さらにはミステリの成果を贅沢に盛り込むジャンル横断性を内包した作風で知られるが、「決闘狂」をお読みになった方には、ぜひとも『Type: STEELY タイプ・スティーリィ』(幻冬舎)をお勧めしたい。ライトノベル的な意匠に「騙されて」はいけない。暴力と狂気に満ちた怒濤のアクションで読者を魅了する作家、それもまた、片理誠の顔なのだ。(岡和田晃)



(PDFバージョン:kettoukyou_hennrimakoto

 なぜこんなことになってしまったのかは、どうしても思い出すことができない。だがなぜ思い出すことができないのかは、はっきりと思い出せる。奴のせいだ。殺さなくては。奴に殺される前に──

「デンタル・ジャンパー」片理誠

 シャカシャカシャカ、歯を磨いていると、いつの間にか理想郷への旅を考えてしまう。しがないサラリーマンの俺がなぜ?それにしても、この歯ブラシ変じゃないか?
 オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。

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「SF Prologue Wave編集部新春のご挨拶」(画・図子慧)

(PDFバージョン:SFPWsinnshunn


①ペンネーム
②肩書き
③SFPWの編集として新年にあたって一言
④今年のお仕事などの活動予定 
⑤SF的アンケート
 a.神になって世界のなにかを変えられるとしたら、なにを変えますか?
 b.タイムマシンを作るとしたら、どんなルールを作りますか?
 c.ペットにしたいクリーチャーは?
⑥一言

「デジタルの夢/アナログの夢、NEOの近況について」片理誠

(PDFバージョン:NEOnokinnkyou_hennrimakoto
 この文章を書いている2012年11月3日現在、私は「NEO」という創作集団の窓口役を拝命しております。
 そこで今回はこのNEOに関して多少ぶっちゃけたところを書いておければと考え、筆を執ることにいたしました。もし良かったらお付き合いくださいませ。
「NEO」が誕生するに至った経緯については、以前私が書いた「SF Prologue Wave」というコラムにあるとおりですので、今回は我々の近況についてを主に取り上げたいと思います。

「タイムレス・カプセル」片理誠

 人生の空しさを心底から感じた時だけその「おっちゃん」は現れる。6年間真剣につき合ってきた恋人と別れたその日も、空っぽの容器の姿で、自称99%の神さま「おっちゃん」は現れた。
 モノが魂を持って動き出す!怒り狂う怪物、奇跡を起こす妖精。時を超え、姿を変えて現れる不思議のかずかず。 オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。

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「幻想郷民譚 ジンライブ1」片理誠

(PDFバージョン:jinlive1_hennrimakoto
 ハイライの奴が「洞窟に寄っていこう」などと言うものだから、“詫びしらの森”に到着したのは昼をだいぶ過ぎてしまってからになった。まったく、エルフ族の考えることはよく分からない。これからこの暗い森の奥まで進んで、日のある内に帰ってこなくては、こちらの身が危ういというのに。
 自然と俺の足は速くなる。ハイライめは後ろから、まるでハイキングでも楽しんでいるかのようなリラックスした様子でついてくる。まったく、事態がよく分かっていないんじゃないか? いくらエルフが優れた狩人だからって、夜の森で「あいつ」に出くわしたくはないだろうに。
 樫や楓、楢、椚。鬱蒼とした木々に囲まれた小道は昼なお暗い。湿っていて、夏だというのに風すらもひんやりとしていた。

「ジャンク・ジャンキー・ジャンクション」片理誠

 モノが魂を持って動き出す!怒り狂う怪物、奇跡を起こす妖精。時を超え、姿を変えて現れる不思議のかずかず。 オリジナルのファンタジー&ホラー作品を配信する電子絵ものがたり「九十九神曼荼羅(つくもがみまんだら)シリーズ」。
 「ジャンク・ジャンキー・ジャンクション」は、時を司るモノたちの旅の始まり。地球と火星の定期航路は日帰りで出張でき、量子コンピュータを有機系生体コンピュータが運用する未来。地球と月には別々の政府があり、戦争騒ぎがあったくらい仲が悪い。情報省の制御室で不眠不休の仕事を続けていたサラリーマンの「俺」はコンピュータを使役してこの世のあらゆること、ヨーロッパの高々度ハイウェイの年間パスの発行数から春日部シティの人口統計の再計算まで、様々な指示をネットワークに送る情報エリートだ。その「俺」が、ごみの山の中で100年以上前の旧式時計と出会った。ともに時を刻む仕事のためにすり減り、そして時代遅れの廃棄物となったふたり。だがそれでも古時計は、捨てられたものたちの桃源郷(ジャンクリラ)を目指すという。果たして彼の言う理想郷は実在するのだろうか?

(注意:PlanetariArt版の「ジャンク・ジャンキー・ジャンクション」と内容は同じですので、ご注意ください)

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