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イソベ ツヨキ

礒部剛喜(いそべ・つよき)

 UFO現象学者 1962年生 日本大学法学部卒 第2回日本SF評論賞優秀賞受賞。翻訳書にヴァレ『異星人情報局(創元SF文庫)』がある。

「ゾガネスの末裔」礒部剛喜

(PDFバージョン:zoganesunomatuei_isobetuyoki
 ……バビロンでは毎年サカエア祭が行われていた。……そのあいだ……死刑囚は王衣を着せられ、王座について、好き勝手に命令を出し、飲み食いして楽しみ、王の愛妾と寝るのを許される。だが、五日たつと、王衣をはぎとられて鞭打たれ、絞首刑かくし刺しの刑に処されるのである。この短い在位のあいだ、その死刑囚はゾガネスという称号で呼ばれた。

――ジェイムズ・ジョージ・フレイザー卿『金枝篇』(一八九〇年)



「地球は狙われている……か」
 全人類の運命に関わるような物語は往々にして、核戦争勃発直前に突如飛来した巨大な宇宙船が、世界から戦争を駆逐して黄金時代をもたらすとか、田舎町に着陸した未確認飛行物体が、そこの住民をみな眠らせてしまい、受胎可能な女性たちに子供を孕ませるとか、中国の奥地に降下した地球外生物と確実に推定される未知の集団が問答無用で攻撃を加えてくるとかで始まるものだが、この驚異に満ちた物語の幕開けは、濃いレイバンのシューティンググラスで双眸を隠した、見るからに精悍そうな若者が、上海の摩天楼に囲まれた古色蒼然たる洋館を見上げながら、そう呟くところから始まる。
「情報のとおりなら、ここにあの娘が囚われているはずだ。そして彼女も……」だが、その青年は自分が複数の影に監視されていることに気付いていなかった……。