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「花嫁」立原透耶(画・YOUCHAN)

(PDFバージョン:hanayome_tatiharatouya

 ある娘が神に愛された。娘は神を畏れつつも、強く魅せられた。その娘はたいそう美しかったから、あちらこちらで評判になり、ついにある金持ちの跡取り息子に見初められた。
 村人たちは、娘は神の嫁になるのだと断ったが、目の前に大金を積み上げられ、誰も断る言葉が喉から出てこなくなった。娘の両親も、神よりも金持ちの人間に嫁げ、と娘を諭した。
 娘は少しずつ一族の刺青を彫り始めていたが、これも中断された。金持ちの息子は内地からやってきた一族で、娘たちとは種族が異なった。彼らは娘の白い肌、柔らかい手触りを好んだ。刺青を嫌っていた。それで娘は、ほとんどの刺青を断念し、手の甲に少しだけ彫ったまま、嫁ぐことになった。
 刺青がなければ、死後に一族の者がわたしを見つけてくれるかしら、と娘は壁にかけられた花嫁衣装を眺めながら涙をこぼした。

タチハラ トウヤ

立原透耶 (たちはら とうや)

1991年コバルト読者大賞受賞。翌年文庫デビュー。FT中心だったのが、気がつくとホラー・怪談中心な日々に。小学校の文集では「夢はSF作家、好きな作家はエドモンド・ハミルトン」と書いていた。表家業は中国関係の先生。最近は『ひとり百物語』シリーズ(メディアファクトリー)中心、でもたまに中国SFの翻訳や紹介もしてます。支配者さまは現在2ニャン。

「支配者種族と奴隷の日常」立原透耶

(PDFバージョン:sihaishashuzokutodorei_tatiharatouya
【自己紹介】
 我が輩は支配者種族である。地球という惑星で最も崇高な生き物であり、奴隷にかしづかれて生活している。奴隷は一人暮らしの売れない三文作家で、口癖のように「仕事がない」と呟いておる。我が輩の生活を支えるためにも、しっかりと働いてほしいものだ。
 我が輩はまもなく4歳になろうとする猫、ラグドールという種族の元男である。奴隷めが、健康によいのよ、などと申して、我が輩をだまくらかし、病院に連れて行き……哀れ、子孫を残すことは不可能な身とあいなった。奴隷めはしばらく我が輩を「宦官」と呼び、「にゃあ」ではなくて「ちゃあ」とこたえるのだと笑いものにしておった。なんでも古の中国では、宦官は「ちゃあ」と返事していたそうな。
 我が輩が奴隷の元にくるきっかけになったのは、えすえふ作家の林穣治氏なる者のブログである。そこで氏の支配者ココベン殿の写真を毎日ためすがえす眺めている間に、奴隷めは見事に洗脳にかかったわけである。そこで、まったく同じ種類、同じ毛並みの我が輩を支配者として迎え入れた、とこういういきさつである。