藤元登四郎(著)
岡和田晃(解説)
寿郎社(web site/Facebook)
ISBN:978-4-902269-80-2 C0095
刊行日:2015年10月15日
2500円
藤元登四郎氏による内容紹介:
フランスの哲学者ドゥルーズと精神分析学者ガタリは、共著『アンチ・オイディプス 資本主義と分裂症』で、スキゾ分析(分裂分析)を提唱し、エディプス概念に支配されている資本主義を脱領土化しようと試みた。スキゾ分析は、エディプスに抑圧された欲望を解放して、人間本来の自由を取り戻すための実践である。なおスキゾ分析でいう欲望とは欠如に由来するのではなく、接続によって生産されるものである。
スキゾ分析の方法は、作品の執筆された時代、すなわち地層の中におけるその位置を検討するとともに、作品そのものの中に既成概念を転覆する箇所や接続した欲望を見出し、スキゾ世界(分裂した世界)を生産する。
本書でスキゾ分析をした作品はすべて、巽孝之・三浦裕嗣(編集委員)『定本荒巻義雄メタSF全集』(彩流社)に掲載されている。荒巻義雄の初期作品は、現実的なものも幻想的なものも過去も未来も同一平面上で接続して、欲望の流れを形成している。その流れは根茎(リゾーム)状に分岐して辺縁へ向かって逃走する。本書によって、これまで謎に満ちていた荒巻文学がより身近で新鮮なものになるだろう。
解説は、現在注目を浴びている新進評論家、岡和田晃の『SF・文学・現代思想を横断し「脱領土化」する平滑的な比較精神史』であるが、本書を背景から照らしだし眩しい輝きで包んでいる。
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「藤元登四郎さんを励ます会」&「第8回日本SF評論賞贈賞式」レポート 忍澤勉
(PDFバージョン:fujimototousirousann8kaiSFhyouronnshou)
2月1日(金) ホテルフロラシオン青山 孔雀の間にて
天気予報の通り、東京地方は暖かな午後を迎えていた2月1日、ホテルフロラシオン青山の孔雀の間で、「第8回日本SF評論賞贈賞式」と「藤元登四郎さんを励ます会」が開催された。
私がここに来るのは3回目だ。最初はもちろん昨年の評論賞の贈賞式で、カチカチになった心と身体のまま、表参道の迷宮にはまりつつどうにか到達した。そして2回目は夏の臨時総会。全身汗まみれでついた席はなぜか最前列。最初に一言コメントを求められ冷や汗もかいた。
ということなので、3度目は余裕のはずが、なんとレポーター役を仰せつかり、また別の緊張感を携えて表参道駅から歩み出した。
「シュルレアリスト精神分析 ボッシュ+ダリ+マグリット+エッシャー+初期荒巻義雄/論」藤元登四郎
「シュルレアリスト精神分析 ボッシュ+ダリ+マグリット+エッシャー+初期荒巻義雄/論」
藤元登四郎(著)
中央公論事業出版
ISBN: 978-4-89514-387-5 C0095
刊行日: 2012年7月10日
2,730円
http://www.chukoji.co.jp/mokuroku/387.html
藤元登四郎氏による内容紹介:
荒巻義雄は、ダリ、ボッシュ、マグリット、そしてエッシャーの作品に注目し、彼らの創造した神秘的な世界をSFとして言語化した。SF化する際に、荒巻はサルバドール・ダリの提唱したパラノイアアック・クリティックを応用した。荒巻のSFを通じて、ボッシュ、ダリ、マグリット、そしてエッシャーの作品の謎の中に入り込んでいく。
特に、エッシャーの作品『カストロバルバ』と同じ題名である、荒巻の『カストロバルバ』は、明晰夢の世界を描いた斬新なものである。明晰夢とは、精神生理学の新しい理論で、睡眠や夢を維持しているときに、完全に意識的でいられる現象である。明晰夢は、東洋の瞑想法に通じており、明恵上人の夢体験について考察した。本書はSF作家には創造のヒントとなり、読者には新しいSFの世界を開くだろう。
フジモト トウシロウ
藤元登四郎(ふじもととうしろう)
精神科医、第六回日本SF評論賞選考委員特別賞受賞、「『高い城の男』-ウクロニーと『易経』」。九州の片隅で、妄想やフィリップ・K・ディックについて考えている。
【竹内博氏追悼エッセイ】「竹内博 ― 怪獣少年とゴジラ」藤元登四郎
(PDFバージョン:takeutihirosi-kaijyuushounenntogojira_fujimototousirou)
謹んで竹内博先生のご霊前に哀悼の意を表します。私は、竹内博先生と直接の関係はありませんでしたが、先生のご著書の愛読者で、偉大なご業績を尊敬しております。
香山滋全集
私が竹内博(敬称略)を知ったのは、香山滋全集(全14巻、別巻1)(1)の責任編集者としてであった。竹内は、この全集について、「スタートしてから五年かかって、体がもつかどうか心配したが、なんとか無事に完成にこぎつけた」と書いている。この全集は、彼の努力なしには日の目を見ることはなかっただろう。