(PDFバージョン:miminisitahanasi2_aokikazu)
知人の話。
学生時代、ペン回しの達人に遭遇したことがあるという。ペン回しというのは、文字通り指の間でペンをくるくると回転させる遊びのことで、単純なものから複雑なものまで様々な技があり、それぞれの技に名もついているらしい。
何の試験だったか忘れたけど、大教室に何百人も学生がいてさ、と知人は言った。顔も名前も知らない奴がいっぱい。だからその子(女の子だったらしい)も誰か分からないんだが。
目の隅でちらちら動くものがある。気になってふと顔を上げてみると、斜め前の席に座ったその子がしきりにペンを回している。ペン回しのやり方を知らなかった知人はその動きの鮮やかさについ見とれてしまったが、しばらくして気がついた。