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「マイ・デリバラー完結記念対談」山口優、じゅりあ

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【対談の経緯】2020年2月20日、SF Prologue Waveで連載を続けていた中編小説「マイ・デリバラー」が第53話にて完結を迎えた。これを記念し、作者である山口優と、タイトルイラストと最終話イラストを担当したじゅりあが対談を行った。対談の企画は次回作の打ち合わせの中で「マイ・デリバラー」を総括してみたいとの両者の考え方から生まれ、最終話掲載直後の2020年2月22日に行われた。

「無職の俺が幼女に転生したがとんでもないディストピア世界で俺はもう終わりかも知れない:第一話」山口優(画・Julia)

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(1)
 栗花落(つゆり)晶(あきら)という自分の名前には特に愛着はない。
 だから、病院の受付のAIがその名を呼んだときにも、俺は「あ、はい」と気のない返事しかできなかった。
 子供の頃はそうではなかったはずだ。もっと俺自身という存在を特別に思っていたはずだ。だが、俺の人生は俺にその特別感をずっと与え続けてはくれなかった。
 第二氷河期と呼ばれる就職難の時代に、俺は大学を卒業した。
 およそ西暦二〇四〇年代前半に起きたその時代は、AIの発展により産業構造の大幅な変換が起こり、俺達が大学で学んだことはほとんど全く企業には望まれず、俺は何度も何度も俺のES(Exploit Summary)データを多くの企業にはねられ続けた。大抵は単能力型AI(ASI、Artificial Specific Intelligence)にはねられ、総合AI(AGI、Artificial General Intelligence)の審査までいったものすら少数だった。
 たぶん、俺のESを見た人間はいないのだろう。
「栗花落さーん、順番です」
 その声に、俺はのそのそと立ち上がり、受付に向かった。

「マイ・デリバラー(53)」山口優(画・Julia)

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 これはわたしの朝だ! わたしの昼がはじまろうとする。さあ、来い、来い、大いなる正午よ!

――フリードリッヒ・ニーチェ著/氷上英廣訳
「ツァラトゥストラはこう言った」


「先輩! そんな堅苦しい格好しなくていいんですってば! ライブですよライブ! それとも舞踏会のつもりなんです?」
 羅欄瑞が「舞踏会」という難しい単語を知っていることに私は寧ろ驚いた。私の格好は別にイブニングドレスというわけでもなく、ただ単にちょっとおしゃれなブラウスとスカート、ハイヒールというだけだ。だが、羅欄の格好を見ると、だぼっとしたTシャツにジーンズ、スニーカーだったから、それに比べれば堅苦しい格好と言えるのかもしれない。
「でもライブができるまでになるなんて、思えばいいことです、うん、いいことだ」
 羅欄はにこにこ笑っている。

「マイ・デリバラー(52)」山口優(画・Julia)

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 わたしの踵は高まり、わたしの爪先はおまえの心を知ろうとして、耳をすませた。耳が爪先についていてこそ、舞踏者というものなのだ!

――フリードリッヒ・ニーチェ著/氷上英廣訳
「ツァラトゥストラはこう言った」


「さあ、君の舞台だ……最初の舞台といいたいところだが、観客がいないのでゼロ番目の舞台だな。けれど、それが次に繋がっていくことは間違いない」
 ヴェイラーの機上、私のプロデューサーたる留卯博士は、そう言って微笑む。
「……また三人で歌うといい。フィル=リルリと君、そして既に救出されたロリロだ。だが、そのためには……分かるね」
 彼女はじっと私を見つめ、言い聞かせるように告げる。

「マイ・デリバラー(51)」山口優(画・Julia)

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 おお、わたしの魂よ、わたしはおまえに、嵐のように「否」という権利を与え、晴れ渡った空が「然り」と言うように「然り」と言う権利を与えた。

――フリードリッヒ・ニーチェ著/氷上英廣訳
「ツァラトゥストラはこう言った」


 ――(目標群ガンマ、出現!)
 リルリの声が通信ネットワークに響く。
 それは、目標群アルファ、ベータと定義されたI体とR体が、軌道上でのドッキングを開始したことを意味する。ラリラがI体を投射した時間はバラバラだが、会合したタイミングはほぼ同時だった。
 ――(ガンマ1~5は、第一分隊、ガンマ6~10は第二分隊、ガンマ11~15は第三分隊が担当、ガンマ16~22は私と……)
 それからリルリは私の方を見た。
 ――(恵衣様が担当します!)

ジュリア


 じゅりあ(Julia):
 東京大学法学部卒業。
 女子(と、それに類するもの)が好きすぎる病をこじらせた週末イラストレーター、ほのぼの日常系漫画家。重度の活字情報中毒。
 過去SF大会にて、対談出演・メイドさんスタッフ・企画イラストを担当させていただいたりなどの他、ゲーム系商業アンソロジーコミック、TCGイラスト参加多数、『クッキンアイドルアイ!マイ!まいん!』『これはゾンビです』シリーズ等のアニメ作品にてイラスト、コミック原稿担当など。
 近年は商品のパッケージデザイン、某バーチャルアイドルさんMVのイラスト担当なども手掛けさせていただいております。

 女子キャラメインで活躍するハード系SF作品のご推薦お待ちしております。

 好きな作品は『たったひとつの冴えたやりかた』『ハーモニー』『ヴァーチャル・ガール』『歌の降る星』『シンギュラリティ・コンクェスト』『星海の紋章シリーズ』『歌う船シリーズ』『電脳のイヴ』『海を見る人』『南極点のピアピア動画』など。
 最近見た映画で一番良かったのは『インターステラー』。

 大好きなのに、文系すぎて自分では描けないハードSF(しかも百合テイスト)の世界にイラストをつけさせていただけて、とても光栄でした、このたびは素敵なご縁をいただけまして、どうもありがとうございました!

 公式サイト:http://jullie.co/ (2017年9月現在、かなり放置&工事中です…手を入れねば…)

「クエスト」山口優(画・Julia)

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「こんにちは。マナミちゃんのママ」
 わざとらしく私をそう言って見つめ、リリカはにっこりと笑って目を細めた。
「――リリカ……」
 私は戸惑った。リリカと呼ぶべきか、リリカちゃんと呼ぶべきか。娘の友人として接するべきか、かつての親友――いやもしかしたらそれ以上だったかもしれない――として接するべきか、全てが分からず、混乱していた。
 私たち二人の間にできてしまった二六年という年齢差が、私とリリカの間に重く横たわっていた。だが、リリカはそんなもの存在しないかのように、ずんずん私に歩み寄る。
 そして、エプロンをした私の腰に、ぎゅっと華奢な腕を回した。
「会いたかった。ユミ」